虚偽の情報で作られた「フェイクニュース」を取り締まる改正法がロシアで施行された。
フェイクニュースは人々の憎悪をかき立てたり、誤った行動を誘発したりすることがあり、世界的に問題になっている。
規制に踏み切ったプーチン政権の決定には賛成の声が上がる一方、国家による情報統制の強化や、表現の自由が狭められることへの懸念が広がっている。
3月18日、プーチン大統領が署名したことで、フェイクニュースを規制する改正行政法が施行された。
ロシア国営の「タス通信」によると、規制の対象になるのは、生命や身体、財産の安全を脅かしたり、社会秩序を乱したりするインターネット上に拡散した虚偽の情報。
インフラやエネルギー施設、交通機関、金融機関などの業務を妨害するような偽の情報も含まれる。
このような情報が見つかった場合、検察当局の要請を受けた連邦通信局が、掲載元のメディアに削除を求める。
メディア側が拒むと、通信局は通信業者にサイトへの接続を遮断するよう要請する。
違反した場合、結果の深刻さや違反者の身分(個人か法人かなど)に応じて最大150万ルーブル(約260万円)の罰金が科せられる。
フェイクニュースをめぐっては、アメリカの首都ワシントンで2016年、ネット上の虚偽情報をうのみにした男がピザ店を襲撃する事件が起きたほか、パキスタンの国防相が偽の情報を信じ込んで核兵器の使用をTwitterで示唆するなど、世界的な問題となっている。
こうした事態を受け、ロシアの一部議員が改正法案を提案、上下院とも圧倒的多数で可決されたが、一方で、懸念する声も上がっている。
ジャーナリストや人権活動家らは法案が可決される前日の3月12日、「フェイクニュースの基準があいまいだ」などとする反対声明を発表。フェイクニュースの取り締まりを口実に、報道や言論に対する検閲が強まると非難している。
改正法と同時にインターネット上で国や社会、憲法などを侮辱する書き込みを禁ずる法律も成立しており、反発はさらに広がっている。
ロシアの前身ソ連では、政府が情報を厳しく統制していた。これに対し、ソ連の崩壊で誕生したロシアでは一時、言論の自由や情報公開が進んだ。
だが、プーチン政権が誕生して以降、国の「中央集権化」が進むと、資源の国家管理や情報統制が再び強化されていった。
「比較的自由」とされてきたネット空間も、最近になって規制が強まっているのが実情だ。