[ロンドン 14日 ロイター] - ウクライナ情勢をめぐるロシアと米欧の対立を背景に、ロシアから資本と頭脳の流出が進んでいる。ロシア経済省は、今年の資本流出額が、昨年の610億ドルを上回る1000億ドルに達すると予測。一部では、流出額は同省の予測をはるかに上回るとの見方も出ている。
オバマ米大統領は今月6日、「(ロシアから)1000億━2000億ドルの資本が流出した」と発言。
欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁も5月に「ロシアから非常に巨額の資金が流出しており、一部では1600億ユーロ(2140億ドル)が流出したとの見方もある」と述べた。
ロシア国立高等経済学院でさえ、今年の資本流出額を1300億━1500億ドルと予測。ある欧米銀行の幹部は、今後、資本流出が加速し「ロシアマネーがロンドン、オーストリア、スイスなど西側に向かう」との見方を示した。
欧米からの新規投資もストップしているとみられる。ある欧米銀行の幹部は「今、取締役会でロシアへの大型投資を提案すれば、笑いものにされ、取締役会から追い出されるだろう」と指摘。
複数のロシア市民も、ロイターに対し、資本規制を懸念しており、手持ちのルーブルをドルやユーロに替えたいと話している。
民間貯蓄の実態は、中銀も把握でてきないが、国民のタンス預金は数百億ドルに達するとの見方もある。
<国外への移住者が急増>
国外への移住者も過去2年で急増。2012年のプーチン大統領就任後、国外移住者は約5倍に増えている。
2013年と12年の国外移住者は、それぞれ18万6382人、2012年は12万2751人。
これに対し、2011年は3万6774人、2010年は3万3578人だった。
統計で把握できないケースもあるため、実際の移住者ははるかに多いとの見方もある。
米法律事務所スクワイア・パットン・ボッグスの幹部は「ロシアの富裕層から問い合わせが増えている」と指摘。国内情勢が悪化した場合に備えて移住先を探す動きが出ているとの見方を示した。
家系調査を代行するウラジーミル・パーリィ氏は今年に入り、顧客からの依頼が4倍に増えた。海外で市民権を申請するため、先祖が海外出身ではないか、調査を依頼する人が増えているという。
独立系調査機関レバダ・センターはの幹部は「最高の教育を受けた最も活動的で起業家精神に溢れる人が流出している」との見方を示した。