写真©Japan In-depth編集部:六本木アートナイト2016 オープニングセレモニー(六本木ヒルズアリーナ)
街全体がアートで包まれる3日間。すでに定着した感がある「六本木アートナイト」がそれだ。10月21日(金)から23日(日)まで開催された。今年のテーマは「六本木、アートのプレイグラウンド ~回る、走る、やってみる。~」。六本木ヒルズ、東京ミッドタウン、国立新美術館の3か所を有機的にアートで結ぶこのイベントは来年で8年目に突入した。
オープニングセレモニーは、フランスを拠点とするスペクタクル・パフォーマンスグループ、カンパニー・デ・キダムの「FierS àCheval 〜誇り高き馬〜」のパフォーマンスでスタート。光る馬のゆるゆるとした動きは荘厳で、その幻想的な雰囲気に、会場を訪れた人達からため息が漏れた。
写真©Japan In-depth編集部:カンパニー・デ・キダム「FierS à Cheval 〜誇り高き馬〜」
商業施設内だけでなく、通りや公園などでもパフォーマンスが楽しめ、飲食店もアートナイト用のメニューを開発するなど、六本木という街全体が楽しいイベント会場のように変貌しているのが印象的で、プログラムを片手に散策するカップルの姿が目立った。まさに、都市のマグネット機能をいかんなく発揮しているといえよう。
今回から開催場所の港区も、東京都・アーツカウンシル東京・文部科学省・文化庁らとともに主催者として名を連ねた。
オープニングセレモニーで挨拶した東京都の中西充副知事は、「TOKYO2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けたムーブメントを国際的に高めます。特に六本木アートナイトは東京が独自性や多様性を世界に向けて発信できる一大フェスティバルです。2020年東京大会の大きな力になると期待しています。」と述べ、国際都市東京の文化情報発信力の強化に期待を寄せた。
また、文部科学省の松野博一大臣は、「六本木アートナイトは、文部科学省主催のスポーツ文化ワールドフォーラムの協賛イベントとして実施しています。スポーツ、文化が国際交流を進めるにあたり、地方活性化にあたる最大の資源です。」と述べ、国として地域作りへの民間のアイデアと推進力に期待を寄せた。
メインプログラム・アーティスト名和晃平氏は、「会場の薄いブルーの綺麗な色は夜明け色をイメージしています。文化の夜明けを迎え、2020オリンピック・パラリンピックに向かって、アーティストや色んな方々が力を結集していいものを作っていけたらいいなという気持ちを込めて作りました。
それから犬島や石巻。そういった東京だけではない日本の地方を繋ぐインスタレーションとしてミッドタウン、新国立美術館前の広場を色んなストーリーが感じられるように作っています。是非その中を練り歩きながらそこに込められたメッセージやストーリーを自由に感じ取って頂けたら嬉しいです。」とアートナイトに込めた想いを語った。
おりしも世界都市総合力でパリを抜き、世界3位にランクアップした東京ではあるが、情報文化の発信力でパリを抜いたとは到底言えまい。六本木地区や秋葉原地区などがこれまで"発信力"を磨いてきたことに疑いの余地はないが、新宿や池袋などに目を転じると力不足は否めない。
国際都市化を目指し戦略特区プロジェクトが進行中の、虎ノ門地区に加え、大手町・丸の内・有楽町地区、日本橋地区、山手線新駅が出来たりリニア新幹線発着駅となる品川・田町地区、そして大規模再開発が進む渋谷地区などが有機的につながり、さらに発信力を高めていく工夫が不可欠だ。
街づくりは10年、20年単位ではなく、50年、100年先を見通して進めていくもの。六本木アートナイトの成功を単なる1地区のものに終わらせるのではなく、東京全体のものにして行く取り組みが求められる。