ロヒンギャはなぜ迫害され貧困に苦しむのか 背景に人身売買組織の「難民ビジネス」

ミャンマーの少数民族でイスラム教徒のロヒンギャの人たちが乗った難民船が、マレーシアなど周辺国に相次いで漂着している。その背景には人身売買組織による「難民ビジネス」の存在が大きい。
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FILE - In this Wednesday, May 20, 2015 file photo, migrants sit on their boat as they wait to be rescued by Acehnese fishermen on the sea off East Aceh, Indonesia. Many of the thousands of migrants abandoned at sea in Southeast Asia this month are Rohingya Muslims who fled their home country of Myanmar. The Rohingya are a Muslim minority in predominantly Buddhist Myanmar, also known as Burma. Numbering around 1.3 million, they are concentrated in western Rakhine state, which neighbors Bangladesh. (AP Photo/S. Yulinnas, File)
ASSOCIATED PRESS

ミャンマーの少数民族でイスラム教徒のロヒンギャの人たちが乗った難民船が、マレーシアなど周辺国に相次いで漂着している。ロヒンギャはミャンマーでの迫害を逃れて海外に脱出しているのだが、背景には人身売買組織による「難民ビジネス」の存在が大きい。

仏教徒の多いミャンマー。政府は以前からロヒンギャをバングラデシュからの「不法移民」だとして市民権を否定しており、130万人が無国籍状態のままだ。ロヒンギャは迫害を受けて貧困に苦しんでおり、また2012年には、西部ラカイン州の仏教徒との間で大きな衝突が起きて14万人が避難民になった。

どこにも行き場所がなくなったロヒンギャらにつけ込んだのが密航業者だ。海外に船で逃れたロヒンギャは、2012年以降で推計16万人、2015年は3月までで2万5000人とされる。人権団体は、ミャンマーの治安部隊が密航業者と共謀し利益を得ているとの指摘する。ミャンマー政府は、この疑惑を否定し、差別は存在せず、ロヒンギャは迫害から逃れるために脱出しているわけではないと主張している

■マレーシア、インドネシアは困惑

イスラム教を国教とするマレーシアは、これまで多くのロヒンギャを受け入れてきた。しかし、とても多くの難民が押し寄せるようになって方針を転換、上陸させずに送り返すようになった。現時点で6000人以上が同国だけでなく、タイ、マレーシアからも受け入れを拒否されて洋上を漂流している。これに対して、欧米や国連など国際社会は批判を強めている。

ボートピープルが急増している背景には、彼らを狙った「難民ビジネス」が活発化していることがある。ロイター通信によると、タイの業者がミャンマーから人を受け入れ、企業などに送り込めば、1人当たり約1万バーツ(約3万6000円)のもうけになるという。密航船の通過や上陸について、お目こぼしを頼むため、軍や警察への賄賂は欠かせない。さらに船賃や労働ビザの取得費用、その他の書類の費用などを含めると、1人当たり数万バーツに上る。それだけの金が動く巨大ビジネスだ。

最近、ボートピープルが急増したのも、タイやマレーシア当局が取り締まりを強化したことで、摘発を恐れた業者が難民らを置き去りにし、船から逃走したためだ。

【アジアの目】どうするロヒンギャ族難民 困惑するマレーシア、インドネシア 背後に難民ビジネス - 産経ニュース 2015/06/04 11:00)

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A group of rescued mostly Rohingya migrants from Myanmar and Bangladesh, sleep at a government sports auditorium in Lhoksukon in Aceh province on May 12, 2015 after Indonesian rescuers found their boat carrying 573 passenger stranded in waters off north Aceh province, an official said. Nearly 2,000 boat people from Myanmar and Bangladesh have been rescued or swum to shore in Malaysia and Indonesia, authorities said, warning that yet more desperate migrants could be in peril at sea. AFP PHOTO / CHAIDEER MAHYUDDIN (Photo credit should read CHAIDEER MAHYUDDIN/AFP/Getty Images)

■タイ陸軍中将を人身取引容疑で逮捕

タイ南部・マレーシア北部のジャングル地帯は、ロヒンギャらの密入国ルートになっている。マレーシアの警察当局は5月下旬、タイとの国境近くにある28カ所の人身売買組織の収容施設で墓穴が139カ所発見され、虐待が行われていたとみられる証拠も見つかったと発表した。ロヒンギャかどうかは不明だが、遺体は墓地と同数の139体になると見られている。

また、タイでは5月、マレーシアとの国境付近でロヒンギャとみられる遺体が30以上見つかった。密入国をあっせんする人身売買組織の本格的な摘発が進んでいる中、タイ陸軍のマナス中将(58)が3日、バンコクの警察に出頭し、2012年11月から今年にかけて、人身売買や被害者の拘束などに関与した疑いで逮捕された。タイの社会で強い影響力を持つ軍からこの問題で逮捕者が出たことに、波紋が広がっている。

中将は人身取引の舞台となったタイ南部に配置された部隊で顧問などを務めていた。ロヒンギャなどの人身取引をめぐっては、これまでに84人に逮捕状が出され、うち51人が逮捕されている。容疑者には警察官や地方職員、政治家が含まれているが、軍関係者はこれまでいなかった。

タイ陸軍中将を人身取引容疑で逮捕 ロヒンギャ問題巡り:朝日新聞デジタル 2015/06/04 00:58)

このロヒンギャを載せた密航船が漂流している問題を受け、関係国・機関が対策を話し合う高官級会議が5月29日、バンコクで開かれた。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、ミャンマー国内の「ロヒンギャ迫害」が問題の根本原因だとして同国の責任を追求した。しかし、ミャンマー側は「我が国を糾弾すべきではない」と強く反発した

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