フィリピンの大統領選が5月9日に投開票され、南部ダバオ市のロドリゴ・ドゥテルテ市長(71)が、アキノ大統領が後継指名したマヌエル・ロハス氏(58)などを破り当選確実となった。任期は6年で、就任式は6月30日。共同通信などが報じた。
ドゥテルテ氏は検事出身。1980年代から断続的に20年以上にわたりダバオ市長をつとめ、治安対策に実績があり、強硬な治安対策から米刑事映画の主人公「ダーティハリー」にも例えられる。選挙戦では、治安回復と汚職撲滅などを掲げ、強い指導者像をアピールした。一方で、東南アジア諸国連合(ASEAN)内でも屈指の成長率を実現したにもかかわらず、貧困層の生活は向上しなかったとしてアキノ政権を批判。既存の政治に不満を持つ有権者から幅広い支持を集めた。
ドゥテルテ氏は「犯罪者は射殺する」「就任したら腐敗した官僚や警察は皆殺しにする」「水上バイクで中国の人工島に行って旗を立てる」といった過激な発言でも知られ、アメリカ大統領選の共和党候補指名獲得を確実にしたドナルド・トランプ氏に重ねて「フィリピンのドナルド・トランプ」とも呼ばれる。市長時代には「処刑団」を率い、薬物犯ら1000人以上を正当な手続きなく超法規的に殺害した疑惑もあり、独裁的な政権になることを危惧する声もある。
■ドゥテルテ氏への支持拡大の背景は
フィリピンは1972年に戒厳令が布告されて以降、マルコス大統領の独裁体制下だったが、86年の「ピープルパワー革命」で民主化が進んだ。その一方で時事ドットコムによると、華人実業家や大地主などの一部の富裕層と貧困層の格差は拡大し、政治も「ダイナスティー」(王朝)と呼ばれる有力者一族が影響力を持つ状態が続いているという。また、首都圏では薬物が路上で売られるなど、治安の悪化も問題となっていた。こうした背景から、貧困格差や汚職などに不満を持つ有権者が、「唯一の反既得権益候補」として中央政界の経験がほとんどないドゥテルテ氏を支持をしたとみられている。
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