「ロックコープス」とは何か? アメリカ発の社会貢献型プロジェクトに迫る

ボランティア活動に参加したらコンサートチケットが入手できるという、アメリカ発の社会貢献型プロジェクト「ロックコープス」。これまで世界9カ国32都市で開催され、日本でも9月6日、福島県のあづま総合体育館で初めて開催された。ロックコープスが目指す新しいボランティアの形とはどのようなものか。
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ボランティア活動に参加したらコンサートチケットが入手できるという、アメリカ発の社会貢献型プロジェクト「ロックコープス」。これまで世界9カ国32都市で開催され、日本でも9月6日、福島県のあづま総合体育館で初めて開催された。ロックコープスが目指す新しいボランティアの形とはどのようなものか。

■ ロックコープスとは何か?

「ロックコープス」は、アメリカ・ミシガン州の発達障害・身体障害の人々のための非営利団体「The Fowler Center」の常務取締役を務めていたスティーブ・グリーン氏が、2003年に仲間とともに立ち上げたプロジェクトで、音楽フェスティバルとボランティア活動を結びつけ、「4時間以上のボランティア活動をすると、コンサートチケットが手に入る」という仕組みを作った。

アメリカ、イギリス、フランスのほか、イスラエル、メキシコ、ベネズエラ、コロンビア、オーストラリア、南アフリカなど、これまで9カ国でイベントが開催され、延べ14万人が参加した。

過去にはレディー・ガガ、リアーナ、マルーン5などのアーティストがライブに出演したが、彼らもイベント開催時にボランティア活動を行っている。

10カ国目となった日本では、東日本大震災の復興支援を目的に、約4000人のボランティアが4月から4カ月間かけて144回のボランティア活動を実施した。

ボランティア活動でチケットを入手した参加者は、9月6日福島市あづま総合体育館で行われたライブイベント「RockCorps supported by JT」に参加した。このライブイベントでは、May J.、flumpool、コブクロ、NE-YOの4組のアーティストが出演した。

■ 「単発のイベントに終わらせない」ロックコープス実行委員会主幹事・中山隆久氏に聞く

ロックコープス日本開催の実行委員会主幹事を務めた中山隆久氏に、イベント開催までの道のり、そしてこれからのロックコープスの展開について話を伺った。

中山隆久(なかやま・たかひさ)

株式会社サニーサイドアップ CSO(チーフソリューションオフィサー)、アカウント&プランニング本部長 

RockCorps supported by JT実行委員会

ロックコープス日本開催の実行委員会主幹事である株式会社サニーサイドアップ中心メンバー。2014年9月に実施された「RockCorps supported by JT」では、ボランティアプログラムの統括、コンサートの運営制作、PR プロモーション活動などを行い、全体の進行管理を担った。

――ボランティアに参加してライブイベントを見る、という趣旨を参加者に理解してもらうために苦労されたことは何でしょうか。その際に、日本独特のボランティア観が障害になっていると感じたでしょうか?

“4時間ボランティアするとアーティストのライブに行ける”という仕組み自体の理解を得ることは難しいことではありませんでした。ただ、何のためにロックコープスをやるのか、その先に何を期待するのか、その全てを伝える必要性を感じていたので、全てを伝えきるという意味では苦労をしました。

ボランティアの応募から実際の参加、ライブイベントまで情報量が多いこともありますし、“ボランティア”という言葉には、人それぞれに解釈があるので、おっしゃるような日本独特のボランティア観が障害になるのでは? という懸念は常につきまといました。しかし実際には、一般の方々からのネガティブな反応は全くと言っていいほどなく、私たちも驚くほどでした。

日本人の理解力の高さもあるでしょうし、やはり現代においてはこういう取り組みも必要だということが感覚的にも受け入れられたのではないかと思っています。

――イベント実現までの間の3年間、頓挫しそうになったことや、ご自身が交渉などで困難を感じたことはあったでしょうか。

ロックコープス実施のための費用を負担するスポンサー企業を見つけることにはとにかく苦労をしました。

多くの企業に協力を仰ぎましたが、日本企業はどこも厳しく、日本国内でも好調と言われる業界の企業においても反応が良いとは言えませんでした。

日本では、企業のブランディングやCSRに対して必要性は認めるものの、そこに多額の予算を割く企業は少ないのが現状です。ロックコープスに興味はあるものの、スポンサードするコストに対して具体的なビジネスメリットがどれくらいあるかという視点になってしまい、日本初開催のイベントで過去実績がなかったロックコープスへ協賛するかどうかの決断が難しいようでした。

そういった意味で、今回のメインスポンサーとなったJTに巡り合えたことは本当に幸運であり、本当に感謝しています。

――イベント会場が福島に決定した経緯と、決定に至るまでに、どんな人が関わってきたかお話いただけますか。

ライブイベントを福島で実施することもそうですが、ボランティアを東日本大震災の復興支援活動にするべきか否かは、企画の当初からずっと議論はありました。

最終的には、今だからこそ東北でやることに意味があり、であればボランティアの活動内容も復興支援を選択肢の一つに含めるという程度ではなく、全てのボランティアを“東日本大震災の復興支援”をテーマに据えてしっかりと向き合おう、ということになりました。その間には、ロックコープス本国の創設メンバーとも何度も議論をしましたし、実際に一緒に東北へも訪問し、福島での開催に対しての意思統一をはかることができました。並行して、スポンサー企業の賛同も得て、最終的には福島県との共催の道筋が立ったところで決めました。

――創設者のスティーブン・グリーン氏から教わったロックコープスの理念、教訓はどんなものがあるでしょうか。

人は誰もが誰かの役に立ちたいという思いを持っているということ、

“音楽”は人を動かし、感動させる力があるということ、

それを支援してくれる人や企業は必ずいるということ。

逆にスティーブンは日本での開催を通じて、日本人のまじめさ、勤勉さ、優しさに本当に驚いていました。

――今後、ロックコープスを展開し、より認知してもらうために、どんなことをお考えでしょうか。

世界的には、今回の日本での開催のように、ロックコープスの取り組みを新たな国や地域に広げることを目指して活動を続けています。

日本においては、9月にプロジェクトの締めくくりとなるライブは終了しましたが、一連の活動を収録したテレビ番組の放送を控えています。テレビ放送は、今回参加したおよそ4000名以外にも、多くの人にボランティアに関心を持ってもらうきっかけづくりとして、ロックコープスには欠かせないものです。初回は関東地域限定の放送ですが、今後、日本全国で番組が放送されることを目指しています。

また、今回のロックコープスに参加した人と、ボランティアを受け入れた団体、NPOとのつながりが途絶えないように支援していきたいと考えています。

そしてどういう形であれ、ロックコープス自体を単発のイベントに終わらせずに、続けて開催していきたいと考えています。

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ロックコープス~NE-YO , コブクロ, flumpool, May J.~」は、2014年10月26日3時10分より、フジテレビ(関東ローカル)で放送される。