本作は、ロボコップのデザインも含め、メカがかなりクールで行けているが、作品自体も現代的でかなり行けている。スタッフをみても、監督ジョゼ・パヂーリャ、主演ジョエル・キナマンで、脇役にもゲイリー・オールドマン、マイケル・キートン、サミュエル・L・ジャクソンとかなり強力なメンツで固めている。
特にこの監督のジョゼ・パヂーリャはブラジルの監督で、本作の前の作品は『バス174』(2002年)、『エリート・スクワッド』(2007年)、『エリート・スクワッド ブラジル特殊部隊BOPE』(2010年)と全てポルトガル語の映画で、『エリート・スクワッド』は金熊賞(ベルリン国際映画祭最優秀作品賞)と受賞しているものの、本作品が実質的なメジャーデビュー。
また、主演ジョエル・キナマンはスウェーデン出身の俳優で、同様に『デンジャラス・ラン』(2012)、『29歳からの恋とセックス』(2012)、『ドラゴン・タトゥーの女』(2011)、『イージーマネー』(2010)とアメリカでの活動も板についてきた。
もともとの『ロボコップ』(1987)も監督はオランダのポール・ヴァーホーヴェンであった。彼も本作品がメジャー(アメリカ)デビュー作であった。彼はこの他にも『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997)、『ショーガール』(1995)、『氷の微笑』(1992)、『トータル・リコール』(1990)などの作品を残している。過激な映像が彼の特徴。
最近のアメリカ(ハリウッド)映画の傾向は、監督に海外の方が多いということである。この連載で取り上げた作品だけでも『それでも夜が明ける』はイギリス、『エージェント・ライアン』もイギリス、『大脱出』はスウェーデン、今年のアカデミー監督賞の『ゼロ・グラビティ』のアルフォンソ・キュアロンはメキシコ、『47 RONIN』はノルウェー、『2ガンズ』はアイスランド、『マリリン・モンロー 瞳の中の秘密』はイギリス、『エリジウム』は南アフリカ、『ワールド・ウォーZ』はドイツ、『ホワイトハウズダウン』もドイツ、『終戦のエンペラー』はイギリス、『アフター・アース』はインド、『華麗なるギャツビー』はオーストラリアとなっている。筆者が本連載で取り上げた洋画25本は、結果的にアメリカ映画がほとんどであるが、そのうち外国人監督は13本でなんと半分以上!である。(『ダイアナ』は英国で、監督がドイツ人でありこれは除く)
映画監督の世界も、市場開放により外資系企業により国内系企業が淘汰されてしまう「ウィンブルドン現象」が進んだということか。(ギャラも、巨匠よりも少しは安いのかもしれない)しかし、このような才能を世界中から集めてくることがハリウッドの強さであり、映画業界の発展に寄与しているのではないか。
「ウィンブルドン現象」の本家であるイギリスを見ていると、金融界とくに、伝統ある銀行界では、現在、HSBC(香港上海銀行)、バークレイズ、スタンダードチャータード銀行、RBS(ロイヤルバンク・オブ・スコットランド)、ロイズ銀行等まだまだ老舗が頑張っている。ロンドンは金融ではニューヨークと並ぶ中心地であり、銀行分野ではイギリスの銀行は強く「ウィンブルドン現象」が当てはまらないようである。
このように自由化によっても、自国の産業がさらに強化されてトップを占めている状況こそ、望ましい自由化ではないか。少なくとも障壁や規制、関税を高くするようでは、逆にその国や産業は衰退していくのは歴史が物語っているが。ちなみにドイツの成長戦略は、財政赤字を増やす可能性が高い財政政策はほとんど行わず、メインは規制緩和政策である。
国際化している日本の国技「相撲」は、最近やや日本人力士が少なく、少々残念なのは筆者だけであろうか。
「宿輪ゼミ」
経済学博士・エコノミスト・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年4月から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の学生さんがもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたにも分かり易い講義は定評。「日本経済新聞」や「アエラ」の記事にも。22日で記念すべき150回を迎え、2014年4月で9年目になります。
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