英国の東岸に細長く延びる沿岸塩性湿地。ここでは堤防によって陸側への湿地の移動が妨げられており、堆積空間を増大させてこれを可能にしなければ、全球的な海水準上昇によって湿地の幅はさらに狭められ、最終的には海に沈んでしまうだろう。
Credit: Mark Schuerch
沿岸湿地は、天然の海岸保護や炭素隔離などの多くの重要な生態系サービスを提供する。将来の海水準上昇に対する沿岸湿地の応答はまだよく分かっておらず、多くの研究では、湿地が広範囲に失われると示唆されている。今回、全球のモデル化手法によって、21世紀における海水準上昇と人為的な沿岸域の占有への応答で生じる沿岸湿地の面積の変化が評価され、湿地は減少するのではなく、現在より最大60%増大する可能性があることが見いだされた。シミュレーション結果は、そのためには、沿岸湿地の37%以上に十分な堆積空間、つまり細粒堆積物が堆積し湿地の植生が定着できる鉛直方向と水平方向の空間があり、堆積物の供給が現在の水準で維持される必要があることを示唆している。著者たちは、適切な沿岸域管理は、十分な堆積空間の利用可能性を高めることによって、湿地の回復力を支持できる可能性があると提案している。
Nature561, 7722
原著論文:
doi: 10.1038/s41586-018-0476-5
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