政府が目指している集団低自衛権の行使容認について、公明党執行部は6月12日、限定して容認する方向で党内調整に入る方針を固めた。連立政権の亀裂を回避するために、譲歩に傾いたとみられる。NHKのニュースなどが報じている。
公明党執行部は、安倍総理大臣の強い意向を踏まえ、北側副代表を中心に対応を検討した結果、「連立政権を維持していくためには、接点を見い出す必要がある」として、事態を極めて限定することで、集団的自衛権の行使を容認する方向で党内調整に入る方針を固めました。
具体的には、昭和47年に出された政府見解を引用し、「国民の生命、自由および幸福追求の権利が、根底からくつがえされるという急迫、不正の事態」に極めて限定して、行使を容認する方向で党内調整に入ることにしています。
(NHKニュース『公明 「極めて限定し容認」で党内調整』より 2014/06/13 04:45)
■選挙を見据えた公明党の苦渋の選択
公明党が態度を変えたのは「今秋の沖縄県知事選や統一選への影響を抑えるため」だと毎日新聞は分析する。安倍首相は11日に行われた党首討論で、行使容認に賛成する日本維新の会とみんなの党を持ち上げる一方、公明党には一言も触れないなど、公明党に対して圧力とも採れる態度をとっていた。
公明党執行部がここにきて行使容認のメッセージを発信し始めたのは、首相が早期の閣議決定を目指す考えを譲らないためだ。同党は当初、閣議決定の時期を来年4月の統一地方選後に先送りし、支持者の動揺を避けようとしたが、首相は時機を逸するのを嫌がった。もともと連立政権を離脱する選択肢はなく、離脱をにおわせた漆原良夫国対委員長の揺さぶりも不発に。党内には「行使容認やむなし」の空気が広がり、今秋の沖縄県知事選や統一選への影響を抑えるため、逆に自民党との早期合意に踏み切らざるを得なくなった。
(毎日新聞「<クローズアップ2014>集団的自衛権、行使一部容認 公明、苦渋の歩み寄り」より 2014/06/13)
歩み寄りに向け、公明党の上田勇政調会長代理は11日にラジオ番組に出演し、自民党との緊密度をアピールした。与党協議では言い合いをしている様子はないと述べたほか、安全保障をめぐる政策についても、見直しをしなくてはいけないとの考えがあることも強調。「(自民党とは)そんなに開きはないと思う」と発言している。
■「書きぶりが重要」 党紙でも表現変更
しかし、集団的自衛権の行使については、公明党内では慎重論も根強いため、どのような内容で合意するかが焦点となる。
与党協議に参加している公明党の遠山清彦衆議院議員は、11日に放送されたテレビ番組のインタビューの中で、「もっと時間をかけて議論すべき」としながらも、閣議決定案について「(集団的自衛権を)どのように扱うように決めたのか、その書きぶりを真剣に見ざるを得ない」と発言している。
行使容認について理解を示したとされる「自衛隊を出動させる際に必要な閣議決定の手続き」などの事例についても、公明新聞の中では「行使容認」との表現を使わず、「現行法制の運用改善」という言葉で対応している。
■議論は持ち越し、来週に
このような中、自民党の高村正彦副総裁は13日に行われた与党協議で、閣議決定の私案を提出。自衛権を発動するための3要件に、集団的自衛権の行使を一部容認する文言を追加し、柱とするよう提案した。
政府がこれまで示してきた憲法上認められる自衛権発動の要件は、(1)わが国に対する急迫不正の侵害があること(2)これを排除するために他の適当な手段がないこと(3)必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと-の三つで、個別的自衛権の枠内にとどまる。
高村氏の私案は、このうち(1)について、公明党が限定容認の根拠になり得ると着目している1972年の政府見解を引用して修正。集団的自衛権という文言は明記していないが、「他国に対する武力攻撃が発生」したことで「国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがある」場合は武力行使が認められるとした。
(時事ドットコム『集団的自衛権に72年見解引用=高村氏、座長私案を提示-与党協議』より 2014/06/13 12:17)
これに対して公明党の北側一雄副代表は、「閣議決定の文案の提示時期も含めて慎重に検討したい」と述べ、持ち帰って検討する考えを示した。
与党協議で決定される閣議決定案はどのような内容で書かれるのか。来週も議論の山場が続く。