『シン・ウルトラマン』にカラータイマーがない理由は?「成田亨氏の目指した本来の姿を描く」と庵野秀明さん【2022年上半期回顧】

成田氏は「ピコピコするのはロボットであり、宇宙人が危なくなったらピコピコするのはおかしい」といった趣旨の記述を残しています。【2022年上半期回顧】
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左=『成田亨作品集』、右=『特撮と怪獣 わが造形美術 増補改訂版』
羽鳥書店/リットーミュージック

2022年上半期にハフポスト日本版で反響の大きかった記事を紹介しています。(初出:5月13日)

庵野秀明さんが企画・脚本を務める映画『シン・ウルトラマン』の上映が5月13日から始まった。1960年代の特撮番組『ウルトラマン』のリメイクだ。これまでウルトラマンの胸にはカラータイマーがあり、3分間とされるリミットが近づくと点滅する設定になってきたが、『シン・ウルトラマン』では登場しない。一体なぜだろうか。

■初代ウルトラマンも、当初のデザイン案にはカラータイマーはなかった

それは、初代ウルトラマンのデザインを手がけた故・成田亨さんのコンセプトを再現するためだった。ウルトラマンの当初のデザイン案には、カラータイマーは存在しなかった。ウルトラマンは「宇宙人らしく、もう肌なのか服なのかわからんようにしてしまう」という発想だったと、成田さんの著書『特撮と怪獣 わが造形美術 増補改訂版』(リットーミュージック)には書かれている。

しかし『ウルトラマン』の企画と脚本を手がけた故・金城哲夫さんからは、ウルトラマンの「エネルギー切れ」を象徴するものとして、胸にピコピコと点滅する装置をつけて欲しいという依頼があった。ウルトラマンの危機を視覚的に分かりやすく表現する手法を導入したかったのだろう。

「ピコピコするのはロボットであり、宇宙人が危なくなったらピコピコするのはおかしい」と、成田さんは反対。しかし、最終的には折れた。不本意ながらカラータイマーをつけることになったという。

『特撮と怪獣 わが造形美術 増補改訂版』には次のような記述がある。

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困ったのは「ウルトラマン」を作っている途中で、金城さんがピコピコいうものをつけてくれってきたんです。「ウルトラマン」のスーツのほうができた段階のことだったと思います。

僕は反対だった。「ウルトラマン」は宇宙人でしょう。「ウルトラマン」は宇宙の人間です。宇宙人も人間であると、僕はそう思っていました。

それが危なくなったら、ピコピコいうのはおかしいじゃないですか。ピコピコったらロボットでしょう。

だから僕は、「ウルトラマン」のエネルギーが切れかけたら、目の光を弱めるとか、顔の色をライティングで青くするとか、なんか他に考えられないかって提案した。

でも、どうしてもこれつけてくれって言う。場所は、やっぱり胸につけてくれって言う。目立つようにってことでしょう。ただ、大きさとか形とかそこまでは注文はなかった。だから、まあ、映画に撮って映りやすい程度の大きさにした。

しょうがないからつけることにして、倉方氏のほうへ発注したわけです。

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■庵野秀明さんが成田亨さんの思いを尊重。カラータイマーをカットすることに

成田さんは後年、ウルトラマンを描く際にはカラータイマーをカットすることが多かった。『成田亨作品集』(羽鳥書店)の表紙になった1983年のウルトラマンの絵「真実と正義と美の化身」にもカラータイマーは描かれていない。

今回の『シン・ウルトラマン』では、この絵を元に成田さんが理想としたウルトラマンの姿を再現することを目標に掲げた。そのため、カラータイマーはカットされることになった。

『シン・ウルトラマン』の企画・脚本を務める庵野さんは公式サイトに寄稿した文章の中で、「成田氏が望まなかった、カラータイマーを付けない」と明言。デザインコンセプトについて、次のように書いている。

「我々が『ウルトラマン』というエポックな作品を今一度現代で描く際に、ウルトラマン自身の姿をどう描くのか。その問題の答えは、自ずと決まっていました。それは、成田亨氏の目指した本来の姿を描く。現在のCGでしか描けない、成田氏が望んでいたテイストの再現を目指す事です」