「課題解決型」のスポーツビジネスとは
1993年に発足して以来、Jリーグが一貫して掲げ続けてきたのが「ホームタウン」に貢献するという姿勢だ。規約にはこうある──Jクラブはホームタウンにおいて、地域社会と一体となったクラブ作り(社会貢献活動を含む)を行い、サッカーをはじめとするスポーツの普及および振興に努めなければならない(*)。
それまで日本のプロスポーツでは、チームに企業名を冠し、企業の広告塔としての役割を担わせることが当たり前だったが、Jリーグではそれを「地域名+愛称」とした。
エンターテイメントを提供するだけにとどまらず、社会的責任を果たす存在であること。SDGs、CSRという言葉を聞かない日はない今日、こうして振り返ると、Jリーグ発足の立役者たちには先見の明があったと言える。
今年11月2日。Jリーグクラブチーム「横浜F・マリノス」を運営する横浜マリノス株式会社が、スポーツによる地域の課題解決をより加速させるため一般社団法人を設立、11月26日に日産スタジアムで記者発表を開いた。
この一般社団法人「F・マリノススポーツクラブ」の取り組みを、代表理事に就任した宮本功さんは「課題解決型スポーツビジネスモデル」という言葉で説明した。
「サッカークラブがなぜ? と思われるかもしれないですが、我々にはこれまでプロスポーツチームとして培ってきたさまざまなアセットがあります。パートナーの力を借りて、地域の課題解決を担っていけるような存在になれば、結果としてSDGsの目標をより多く達成できるようになると考えています」
新しい観戦マナーも必要に…
横浜マリノス株式会社の活動のうち、アカデミー・スクール事業、電動車椅子サッカーの大会共催や普及事業、知的障がい者サッカーチーム「フトゥーロ」の運営、地域活動に関する領域をまずは移管させる形で、2021年2月1日より活動をスタートさせるという。
ホームタウンの横浜市、横須賀市、大和市や、パートナー企業とも連携を強化する。
そして、様々なパートナー企業の中に「サステナブル ホームタウン Rethink パートナー」として名を連ねているのが、JTのRethink PROJECTだ。Rethink PROJECTはJTが取り組んでいる社会貢献活動の総称で、立ち止まって「当たり前」を考え直してみようというアクションを広げ、地域の課題解決に取り組むことを目指している。
新型コロナの影響でスポーツ興行が大きく影響を受け、これまでの常識を持ってしては解決できない課題が増えている。そんな中、Jリーグがずっと大切にしてきた「ホームタウン」という理念を冠するパートナーは、Rethinkというアクションでどのような課題の解決を目指しているのだろうか?
Rethink PROJECT推進責任者の藤内 省吾さんは次のように語る。
「F・マリノススポーツクラブは、理念として『スポーツが持つ無限の可能性に挑戦し、地域社会とともに“夢”と“幸せ”そして“未来”を早出する』という言葉を掲げていらっしゃいます。地域社会に根ざした活動を行う我々として非常に共感し、一緒にお取り組みをさせていただくことになりました」
「そうした未来を目指す上で僕たちが提供できるのは『Rethink』という考え方。たとえば、アフターコロナの時代では新しい観戦マナーも必要になってきますよね。これまでの当たり前に囚われずに、スポーツの新しい楽しみ方、新しい未来を一緒に考えていくことができると思っています」
今後はスクール・アカデミーの領域や、地域清掃活動での協業を検討中だという。また、Rethink PROJECTとF・マリノススポーツクラブがイメージする「ホームタウン」を描いたキービジュアルを共同で作成した。
さまざまな人々がスポーツを通じてつながり、助け合い、未来が生まれていく……Rethinkというアクションで、「ホームタウン」は今まで以上に新しく、希望にあふれた場所に進化していくのかもしれない。