「全人代」2020年の注目ポイントが3分でわかる。共産党にとって特別な1年だったはずなのに...

例年より2カ月以上遅れての開催。新型コロナで前途多難な政府は、「倍増計画」達成にこだわり続けるのか?

中国の全国人民代表大会が5月22日から始まる。新型コロナウイルスの影響で例年より2カ月以上遅れての開催となる。

2020年は新型コロナへの勝利を強調する一方で、ダメージを受けた経済をどうかじ取りしていくかが最大のポイントだ。どこに注目すれば良いか、分かりやすく整理した。

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マスク姿で警戒に当たる治安要員(中国北京の天安門広場)
EPA=時事

■コロナへの勝利アピール

全人代は中国の憲法で規定された国の最高権力機関。立法機能を持ち、憲法の改正なども行う。2018年には国家主席の任期制限が撤廃され、習近平(しゅう・きんぺい)国家主席が期間の制限なくトップの座に止まることが可能になった。

中国の各省や直轄市(北京や上海など)、少数民族、人民解放軍などの代表から構成される。参加する各地の代表はおよそ3000人程度。報道では、日本の国会に相当する機関と紹介されることが多い。

毎年3月5日に開催されるのがお決まりだが、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて異例の延期。5月22日の日程が発表されてからは、北京の世界遺産・故宮の観光客受け入れを再開するなど、収束ムードの演出を進めてきた。

今年の全人代では「新型コロナへの勝利」が喧伝されることは間違いない。国民から選挙で選ばれたわけでもない共産党政府が、中国を統治する正当性をアピールするためだ。

■こだわるか公約達成

最大の注目は初日の「政府活動報告」だ。李克強(り・こくきょう)首相が、前の1年間に政府があげた成果を振り返り、今年1年間の目標を発表する。

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会場の人民大会堂(中国・北京)
EPA=時事

例年ならば経済成長率の数値目標に注目が集まる。中国の成長スピードは徐々に減速していて、2019年は6〜6.5%という目標を示し、結果的に6.1%となった。

しかし、2020年は今までと違って具体的な成長目標が示されない可能性も指摘されている。

もともと、中国にとって今年は特別な意味を持っていた。

政府はかつて、2020年までに「2010年と比べてGDPを倍増させる」と宣言。公約達成をかけた一年だったのだ。

この達成には当初、1年間で5.6%程度の成長が必要とみられていて、中国政府にとっては十分クリアできるラインだった。しかし、予想外の新型コロナの蔓延で暗雲が漂う。中国は経済に大きなダメージを負い、1月から3月までのGDP成長率は-6.8%と記録的な落ち込みだった。

あくまでこの公約達成を目指すのか、あるいは達成をあきらめて現実路線を採るのか。李首相の発表する内容が注目される。

■新インフラやアメリカ・台湾...

全人代を前に、中国メディアが盛んに報道するのが「脱貧困」だ。

中国では年間2300元(約35000円)未満で暮らす人を「貧困層」と定義していて、2020年は貧困撲滅に向けた1年でもある。

国家統計局の発表では、中国の貧困層は2019年末時点で約551万人。「GDP倍増」は不透明になったものの、貧困ゼロを打ち出す可能性はある。

政府が次世代の成長エンジンの1つと位置付ける「新インフラ」にも注目だ。新インフラとは、次世代高速通信の5G基地局やAIをはじめ、都市間を結ぶ高速鉄道や新エネルギー車の充電設備など7つの領域を指す。

高速道路や病院などの旧来型のインフラと違い、中国政府が明確に力を入れる意思を示している分野で、新型コロナでダメージを受けた経済をこれから牽引する分野として期待を寄せている

経済分野以外にも、新型コロナの発生源をめぐって舌戦の続くアメリカとの関係や、統一を目指す中国を拒絶する台湾など、外交分野でどのような姿勢を見せるのかも注目だ。