日本政策学校では2016年3月6日に株式会社 NO BORDER代表取締役・公益社団法人自由報道協会副代表の上杉隆氏による政策議論講義「政治とマスメディア」を開催いたしました。
以下はそのサマリとなります。
「権力とメディアに望まれる健全な関係」
-権力とメディアは、フェアな緊張関係になければならない。
しかしわが国では、記者クラブの権力が大きく、その背後で恩恵を受けているのが官僚である。
この責任は、メディア側に大きくあると思われる。
記者クラブのシステム強固になりつつある現在、言論の一元化やそれが引き起こす独裁、さらに戦争が懸念される。
そこで、記者クラブを解放し、メディアの実態を改善して、健全な言論空間をつくることを切に望む。
◇権力とメディアの関係
先月、高市総務大臣が、憲法改正に反対したテレビ局に対して「政治的に公平でない発言をするなら、電波を停止する」と言及して物議を醸している。しかし、高市大臣が放送法に基づいて発言したのであれば、メディア側はこれに対してニュース番組で流すという武器をもって、対抗すればいいのではないか。
かつてのBBCも、サッチャー政権より「電波停止」の脅しを受けたことがあった。しかしBBCは、自分たちが忠誠を誓うのは、政府ではなく視聴者であるとして、毅然とした態度で臨んだ。このように、権力とメディアがフェアな緊張関係にある言論空間が必要である。
◇権力と一体化するメディアの責任
しかしわが国では、記者クラブの権限が絶大で、記者クラブの許可がないと記者会見に入り込んで取材できない。
日本の企業は、官僚から受け取った情報で動いているが、その情報を有料で提供しているのが、記者クラブである。
記者クラブを制約する法律も存在しない。しかし、一見、記者クラブが恩恵を受けているようであるが、もっとも恩恵を受けているのは官僚である。すなわち、記者クラブは、官僚の都合のわるいことを報道せず、都合のよいことだけを報道する。いわゆる『官報複合体』と称されるところである。
これでは、政府とメディアのフェアな関係を、築くことができない。この責任は、政府の側よりもメディアの側に大きくあるのではないか。70年以上前の戦時下における情報より、現在の原発の情報まで、国民はメディアによってさえ、真実の情報を得ることができない。
◇今後の期待=健全な言論空間をつくること
記者クラブのシステムは、1990年代半ばより強固になってきている。すなわち言論の一元化という方向に向かっている。
言論が一元化に向かえば、独裁が引き起こされ、必ず行き着くところは戦争である。私はそれを懸念する。
これからの日本のため、健全な言論空間をつくるために、記者クラブを解放するしかないと思う。
日本の言論空間の歪みの根源であるメディアの実態を改善することを、私は切に望んでいる。
◇質疑応答より
・数多くのニュースに対して、効率よく真実を見極める方法はあるのか。
→以下の『ジャーナリズムの5原則』を思慮に入れて、ニュースを見るよう心がければ、真実を見極める目が養われる。
1.バイライン(署名) これがない情報を疑うこと
2.ソース(情報源) これが曖昧な情報を疑うこと
3.クレジット(引用) これが曖昧な情報を疑うこと
4.コレクション(訂正)
5.オプエド(自分と異なる意見を載せる余裕)
・世論調査について
→世論調査は、第三者機関が行った方がいいと思う。
現在は頻繁に行われているが、メディアは少々遠慮した方がいいのではないか。
■上杉隆氏プロフィール
上杉隆(うえすぎ たかし)
株式会社 NO BORDER代表取締役
公益社団法人自由報道協会副代表
日本ゴルフ改革会議事務局長
1968年生まれ 福岡県出身
都留文科大学卒業
テレビ局勤務、衆議院議員公設秘書等
「ニューヨークタイムズ」東京支局取材記者などを経て、フリージャーナリストに。
2002年 第8回「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」で企画賞を受賞
2011年 「自由報道協会」創設(2012年より公益社団法人)
2012年 メディアカンパニー「株式会社 NO BORDER」設立