私たちが脳梗塞リハビリセンターを設置するまでの経緯の詳細は本年1月14日のMRICに掲載いただいた通りです。日々サービスを提供する中で、利用者の方から「リハビリしたくても、できるところがない。」と言う声を聞いていたものの、それはどのくらいの方が感じられていることなのかと疑問に思い、今回調査をしてみました。今回の投稿ではその一部を紹介したいと思います。
【リハビリする場所がない】
今回の調査は20~69歳の脳卒中(脳梗塞・脳出血等)経験者:310名とその家族:310名の計620名に調査を実施しました。
その結果、脳卒中経験者で“後遺症あり”の2人に1人が「リハビリする場所がない」「社会復帰願うもできない」と感じている実情が浮き彫りになりました。
脳卒中を経験した後の社会復帰について尋ねたところ、「部署や職種の変更」「転職」「離職し求職したが見つからず」「離職」など仕事を変えた・やめたの合計が55.3%(20-50代)となり、2人に1人が仕事環境の変化を経験しており、さらに後遺症を抱えた人に絞ると同64.4%となり就労継続の難しさが明らかになりました【図1】。
また『仕事環境の変化を経験』した人に今後の就労意向を尋ねたところ、「以前の仕事に復帰したい」「何らかの仕事につきたい」の合計が50.9%となり、再就労を希望する人は半数を超えました。一方、諦めているとの回答も2割近くと社会復帰を願うも難しい状況が明らかになりました【図2】。また仕事を変えた・やめた理由を尋ねたところ、「後遺症などにより復帰が困難だったため」が53.1%となり、「病後も続けるにはハードだったため」が30.4%と続きました【図3】。
後遺症を抱えた人の54%は、「退院後のリハビリ環境が十分でない」と答えており【図4】、「維持ではなく改善したい」「回数や時間の制限なくリハビリをしたい」という意見がそれぞれ73.4%。65.6%となりました【図5】。
さらに、脳卒中経験者の家族に、今後求めることを尋ねました。「有効なリハビリに関する情報」「自宅でできるトレーニングメニュー」がそれぞれ70.6%と高いニーズがみられました。また、介護者自身のレスパイトになる(負担を軽減する)サービスや介護者として同じ境遇にある人同士での情報交換についてもそれぞれ65%、53%(非常に必要を感じる+必要を感じる)と回答しました【図6】。
「求める退院後のリハビリ環境」についての自由回答においても、思う存分リハビリできる環境の整備(有償含む)など、介護負担軽減のためのリハビリの必要性についての意見が多く寄せられました。
【リハビリと就業】
このような実情のなか、2月23日、厚生労働省より「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」が公表されました。これは、がんをはじめ脳卒中などの疾病を抱える方々が、治療と職業生活の両立するため雇用先の企業がどのような体制を組むべきか、具体的な支援策を示した指針です。読み込んでいくと通院治療だけでなく障害、とありますので、リハビリテーションも対象になってくるようです。治療技術の向上により疾病や後遺症を抱えながら就労継続できる方が増えているということが背景にあります。
日本経済新聞によりますと、脳卒中になり病院を退院する方のうち、およそ半数が後遺症を抱えたままであると言われています。また厚労省は現在、日本国内には脳卒中患者が150万人おり、10年後には300万人に倍増する見込みと試算しています。
脳卒中の後遺症に対する病院での入院リハビリには日数制限があり、退院後の受け皿はデイサービスまたは訪問リハビリとなっています。それぞれ集団リハビリであることや時間制限があることなどから、勤労世代や個別のニーズに対応しきれてはいないのが現状です。
脳梗塞リハビリセンターは障害を抱えて復職へ向けて励んでおられる方々に多くいらして頂いております。それぞれの方の社会復帰に必要なリハビリは既存の制度内のリハビリだけでは賄えないため、マンツーマンで個々の目標設定を行ってリハビリをしているのです。
今後も、リハビリ環境の充実に努めるとともに、脳卒中を経験され、障害を抱えて復職へ向けて励んでおられる方々の声を発信していきたいと思います。
■調査結果(グラフなど)をご覧いただけます
(2016年3月31日「MRIC by 医療ガバナンス学会」より転載)