岐路に立つ難民問題:柔軟な対応が各国に求められている

UNHCRやアムネスティは、第三国定住(最初に受け入れた国とは別の国が受け入れる)を採用するよう先進諸国に呼びかけている。もちろん、必要な支援額を拠出する責任も果たすべきだ。
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amnesty international japan

シリアで紛争が起きてから3年、家を追われた人は900万人にのぼる。実に国民の半数である。シリアの人たちだけでなく、世界には現在、4千万人以上が、避難生活を送っている。しかし、こうした人びとが保護されているとは言い難い状況が続いている。

難民は周辺の途上国で受け入れる、そのかわり受け入れにかかる費用は先進諸国が分担するというのが、現在の難民保護体制の実情だ。地理的に近い周辺国にいた方が難民の負担が少ない、というのが一つの理由だが、そこには途上国の難民を途上国にとどめておきたいという、先進国の思惑が働いている。故郷に近いところが難民にとっては一番だ、物やお金は支援するからそこに留まってくれ、というのが一貫した姿勢なのだ。

しかし、シリアの難民の9割を受け入れている周辺国は飽和状態で、各国市民の暮らしを脅かすレベルに達している。一方、先進国で積極的に手を差し伸べる国は、ほんの一握りだ。先進国が担当である財政支援も、国連が要請した必要額の半分にも満たない。

西側諸国が共産圏諸国からの政治難民を想定してつくった今の難民条約では、難民は「人種や宗教や政治的意見などで迫害された人」と定義されている。今の数百万人規模の難民はほとんどが「紛争難民」で、条約の定義に照らすと当てはまらない。この齟齬が、大量難民に対応できない現状の根底にある。難民との区別が難しい移民も増えている。

難民保護体制が抜本的な見直しを迫られているのは、明らかだ。しかし、シリアの窮状は待ったなしだ。

そこでUNHCRやアムネスティは、第三国定住(最初に受け入れた国とは別の国が受け入れる)を採用するよう先進諸国に呼びかけている。もちろん、必要な支援額を拠出する責任も果たすべきだ。

■ 難民に冷たい国ニッポン

条約にある難民定義を持ち出して難民を締め出している典型が、日本だ。

日本の難民受け入れ数の少なさは世界的に有名で、昨年度は3,260人の難民申請に対し認定者はたったの6人である。シリアから逃れてきた人びとに関しても、過去2年間で50人以上が難民認定を求めたが、法務省は1人も難民とは認めず、33人に対して人道的配慮から在留を特別に認めただけだ。日本で難民認定を受けるのは宝くじに当たるようなものである。

保護を求めて日本にやって来た人たちは、まず、入国管理局に留め置かれる。そして多くが、収容施設に入れられてしまう。これはもともと、強制退去手続きの対象となった外国人を、送還または放免まで収容する施設である。しかし、予算がないからと、難民申請中の人びともここに収容している。難を逃れてやってきた人たちに対し、それだけでも酷いのに、収容中の処遇にも、強い非難が上がっている。家族と会うのにガラス越し、病院に行くのに手錠・腰縄をつけるなど、まるで囚人扱いだ。

2010年、日本は第三国定住のパイロット事業をスタートさせた。タイの難民キャンプにいるビルマ難民を対象にしたものだ。しかし、年々希望者が減り、3年目の2012年には、ついにゼロであった。

「難民に冷たい国」という評判は、世界中の難民に浸透しているのかもしれない。

日本政府は、このまま冷淡な対応を続けていくのだろうか。

■ オンライン署名公開中!

アムネスティでは、シリア難民の受け入れを日本政府に求めるオンライン署名活動をしています。ぜひ、ご参加ください!

▽ 行き場のないシリア難民を救え

■ 6月20日は「世界難民の日」です!

なんみんフォーラムでは、当日14時より東京・四ツ谷で公開シンポジウムを開催します。

入場無料、難民の人びとによるカフェやアクセサリーの販売も行います。

詳細はこちら→ http://wrd2014.jimdo.com

※なんみんフォーラム:日本に逃れてきた難民や保護希望者を支援するNGOのネットワーク組織。アムネスティ日本も構成団体です。