難民を「人材」に。難民の「働く」に寄り添うシェアハウスが運営開始

NPO法人WELgeeのスタッフが一緒に暮らし、難民の就職活動全般のサポートを行うのが特徴だ。
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NPO法人WELgee 渡部清花さん(左)、山本菜奈さん(右)
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戦争や宗教的迫害などで母国から逃れてきた難民が日本でキャリアを築くための「最初の一歩」を支援するシェアハウス「TOKIWA(トキワ)」が4月5日、都内で運営を開始した。難民支援を行うNPO法人WELgee日本福音ルーテル社団の共同で運営される。これまでの難民シェルターと異なり、単に住居を提供するだけではなく、日本人のスタッフが同居し、難民の就職までのサポートを間近で行うのが特徴だ。

難民認定に頼らず、生活基盤の確保へ

日本の難民認定は、国際的にもハードルが高いことで知られている。法務省の発表では2018年、10,493人の難民申請があったうち、難民認定されたのはわずか42人(0.4%)だった。

「99パーセント難民認定されない日本で、難民認定だけが日本での生活を安定させる選択肢というのは苦しい」とWELgeeの代表・渡部清花さん。何か他の選択肢はないのかーー。

WELgeeは、この視点から、難民が「難民認定に頼らない方法」で日本で生きる道を切り拓く支援をしている。日本でキャリアを築くことで、安定した法的地位を取得し、日本での生活基盤の確保を目指すという方法だ。

難民がキャリアを築く上での障壁を解消する

しかし、難民が日本でキャリアを築くのは容易ではない。

WELgeeによると、多くの難民が、就労資格を得ても、家賃や水道光熱費などの最低限のライフラインを担保するために「その日暮らし」から抜け出せない状況にあるという。日雇い労働や夜勤の仕事に頼らざる得ない人が多い。また、日本語が話せない上に、周囲に頼れる人もいない難民は、社会で孤立しがちだ。生活や就職活動に必要な情報・知識を得ることも難しく、孤立が孤独にも繋がってしまう。

TOKIWAは、こうした障壁を解消することを目指す。

ライフラインとなる住居を提供することで、難民が日本語の習得や就職活動に専念できる環境を提供する。さらに同居するWELgeeのスタッフが、難民の生活面をサポートしながら、企業研究やレジュメ・職務経歴書の作成、面接対策などの就職活動全体にわたって「伴走」する。単に住居を提供するだけではなく、「就職」という明確な出口を設定したのがいままでにない試みだという。

難民の「人材」としての可能性

難民の中には、高い教育を受け、母国では高いスキルや経験をもって活躍していた人も多い。WELgeeはこれまでも、プログラマーや、高いビジネススキルを持つ人の就労を支援してきた。

WELgeeの山本菜奈さんは「同世代の(難民の)若者たちがこんな能力もあって、こんな経験も持っているのに、それを全く生かさないなんてもったいないと感じます」と話す。

彼らが「人材」として働き、将来日本と母国の架け橋となってもらえることを期待している。

TOKIWAという名前は、手塚治虫や藤子不二雄など日本を代表する漫画家が下積み時代を過ごした「トキワ荘」が由来となっている。「この場所からスーパースターを生み出したい」という想いを込めた。

TOKIWAは、都内の、賑やかな商店街を抜けた落ち着いた住宅街の一角にある。全ての部屋に日光が明るく差す間取り。6畳ほどの個人用寝室が4部屋、定員4人の家族用寝室が1部屋で、全部で10名が入居可能だ。入居者とスタッフが交流する共同スペースもある。今月の下旬から順次入居者が越してくる予定だ。 

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TOKIWAの内部 左手に個人用の部屋が4部屋、右手はクローゼットとシャワールーム(3部屋)。
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個人部屋(6畳ほど)
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