こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。
今日は宇佐美典也さんと運営するオンラインサロンの月イチ勉強会。
本日のテーマはずばり「軽減税率」。
軽減税率「財源6000億円」 官邸、財務省に上積み指示
今日もこんなニュースが流れていたように、
すでに軽減税率導入については確定的になっていて、
その線引をどこでするかに議論の焦点が移っているかのようですが…
私はこれは近年稀にみる(いや色々あるけど)筋悪政策だと思っておりまして、
これまでも何度か反対意見をブログ上で表明してまいりました。
【消費増税】「軽減税率」は最悪の選択肢?!
【メモ】世論調査の軽減税率「必要」74%で、軽く絶望が止まらない件
とはいえ、ここらで改めてこの分野の専門家をお呼びして、
いま一度曇りなき眼で軽減税率を考えなおして見ようではないかっ!
ということで、創価大学で経済学を教える中田大吾先生をお招きしたところ、
いきなり結論出ちゃったーー
この政策を激烈に推し進めている公明党と強い関係(?)にある、
創価大学で教鞭を取る教授とは思えぬド直球っぷり!
ほらまあ、学の独立ということで…。
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実は恩恵をうけるのは高所得者だとか、
一人あたり数千円しか軽減されないのに事務コストが莫大とか
多すぎる欠点はすでに指摘をしてきた通りですが、推進論者が主張する
「欧州などの先進国では、軽減税率が当たり前!日本がやらないのがオカシイ!」
という理論の間違いについて、
今日の勉強会の内容から指摘しておきたいと思います。
消費税(=経済学用語では一般に「付加価値税」)を導入している欧州の多くの国では、
確かに軽減税率(複数税率)が敷かれているところが多いのは事実です。
しかし、その部分だけをもって判断するのは軽率です。
欧州各国が付加価値税を導入し始めたのは1960~70年代にかけてで、
ここが付加価値税の「第一世代」と呼ばれています。1980年代に導入した
日本は第二世代、1990年以降に導入した東欧諸国などが第三世代に当たります。
で、付加価値税先進国(第一世代)は複数税率でスタートした国が多いのですが、
これは従前の税制との整合性を図るために仕方なく、
政治的妥協の末に取られた手法の一つでした。
当時の欧州は分野ごとに税制が異なるものが多数あり、
これを機会に統一を図ろうとしたことに抵抗が大きく、
現状を追認する形で複数税率になったのですね。
そこには
「経済的困窮者に対して配慮を!」
というような、福祉政策的な観点はあまりなかったわけです。
結果、非常に税制が複雑になり、新しい品目が生まれる度に議論になるなど、
欧州各国は複数税率導入の後遺症にいまなお苦しむことになります。
こうした明確な「失敗例」を間近に見たため、
付加価値税導入の第二世代・第三世代は複数税率を避けて
「単一税率」を選択することが主流となっています。
経年変化を数値で見ると以下のとおり。
【1989年以前に軽減税率を導入】
単一税率:12カ国 複数税率:36カ国
→複数税率のシェア75%
【1990年から94年に軽減税率を導入】
単一税率:31カ国 複数税率:15カ国
→複数税率のシェア33%
【1996年以降に軽減税率を導入】
単一税率:25カ国 複数税率:5カ国
→複数税率のシェア16%
ということで、複数税率の導入を世界が避けていることは明らかです。
ですので「欧州では常識」という主張を正しく訂正するならば、
「かつては複数税率がたしかに主流であったが、問題点が多いため、
その反省から今のトレンドは単一税率になっている」
ということになります。
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そんなわけで、中田先生からの軽減税率の講義内容は多岐に渡りましたが、
「欧州で失敗とわかりきった結論を、20年後にわざわざ追いかける必要はない」
という言葉が印象的でした。先般のIMFによる勧告の中でも、
軽減税率には否定的な見方が示されています。
単一税率は優れた制度=消費税「軽減」慎重に-IMF財政局長
欧州が喉から手が出るほど実現したかった単一税率を、
わざわざ手放すのは愚の骨頂とも言えるでしょう。
与野党の駆け引きの中で既定事実化されている軽減税率導入ですが、
なんとかここから世論喚起により一発逆転がありえないかと思うばかりです。
衆参同日選挙を開催するために、再び消費税延期が争点になって吹っ飛ぶ!
…なんてことは、ないかなあ。。微力ながら軽減税率導入には、
最後まで異を唱え続けていく所存です。
そしてオンラインサロンに入会希望の方は、
下記のページから予約申込をお待ちしております^^
それでは、また明日。
(2015年11月29日「おときた駿公式ブログ」より転載)