「日本の改革進んでいない」海外エコノミストの見解 薬ネット規制と闘う三木谷氏に追い風となるか
楽天の三木谷浩史社長は6日、市販薬(一般用医薬品)のインターネット販売を一部制限する政府方針に反発し、産業競争力会議の民間議員を辞任する意向を示した。
田村厚労相が同日、医療用医薬品から一般用医薬品に転用されたばかりの「スイッチOTC薬」23品目と、劇薬または毒薬に該当する「劇薬指定品目」5品目のネット販売解禁に制限を設ける新たな方針を示したためだ。
これまでネット販売の全面解禁を主張してきた三木谷氏は、「時代錯誤もはなはだしい」と批判し、安倍首相が立法化に同意するなら裁判も辞さない構えを示した。加えて、国を訴える一方、政府側の民間議員をやっているのはおかしい、と辞任理由も説明した。
それに対して菅官房長官は、99%の一般用医薬品はネット販売が認められる、と方針を擁護したうえで、一部のネット販売規制について「安全性と利便性を念頭に置いた結果のものだ」と強調している。
産業競争力会議は、アベノミクスの成長戦略の要といえるものであり、三木谷氏が辞任すれば、政権運営に影響が出るのではと海外メディアが注目している。
【すべての薬をネット販売できない理由とは】
厚生労働省は、ネット販売と対面販売で購入者に伝える情報に差がないという意見が挙がった一方で、対面販売の方がより安全を確認できるという判断を専門家が下した、と説明し、「政権の判断」ではないとしている。
これに対して楽天の國重副社長は、一部不満は残るものの同意できる内容だったと評価している。ただ、ネット販売には「情報提供や収集の確実性」や「トレーサビリティ」など対面販売よりも優れた点を述べている。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、全国薬害被害者団体連絡協議会の増山氏の、「購入者は薬について十分な知識をもっているとは言えず、時間や年齢を問わず医薬品を簡単に入手できる環境に深く懸念しています」、というコメントを取り上げた。
なお、安倍首相は6月、消費者の安全性を確保しつつ、しっかりとしたルールのもとで、すべての一般医薬品のネット販売を解禁すると表明していた。
【アベノミクスにどう影響を与えるか】
三木谷氏の辞任意向により、規制改革を含むアベノミクスの「成長戦略」のイメージが損なわれる可能性があるとブルームバーグは報じている。
またブルームバーグがエコノミスト34人を対象に行った調査によると、うち15人が、安倍政権は成長戦略において大胆な政策を打ち出せていないという見方を示した。これは2%の物価安定目標の実現を困難にするという。
薬のネット規制緩和や減反政策の廃止などは報道されているものの、その他の分野で規制改革があまり進んでいないのでは、という専門家の指摘も報じられている。
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