人種問題に揺れるアメリカ。しかし、ハリウッドにおける人種を巡る議論は問題の核心をついていない、と俳優ウィル・スミスは語る。
2015年12月にアメリカで公開される映画「Concussion(脳しんとう)」でベネット・オマルー医師を演じているスミス。11月15日に「ハリウッド・リポーター誌」主催の俳優座談会「アクター・ラウンドテーブル」に出演した。そこで人種に関する問題について尋ねられると、妻で女優のジェイダ・ピンケット=スミスと、「“人種差別”と“偏見”の違いについて話し合ったばかりだ」として、こう語った。
「誰もが偏見を持っています。人生や経験はその人の好みを形作ります。黒髪よりブロンドを好むようになったり、道の向こうから黒い肌の人が歩いてくるのと、小柄な白人が歩いてくるのでは反応が違ったりするのです」
スミスによれば、偏見より人種差別の方が悪い。彼は人種差別を「自分の人種の方が優れているという感情」と説明した。
「私はずっと偏見の中で生きてきました。人種差別に直面したことはほとんどありません」
それでも、ハリウッドで人種差別をする人に遭遇したこともある。そんな時は、一緒に仕事をするのをすぐに断ってきたそうだ。
その後、インタビュアーが人種差別と闘うために俳優にできることはあるかと尋ねると、同じアフリカ系アメリカ人俳優のサミュエル・L・ジャクソンは「無い」と答えたが、スミスはもうすこし前向きな言葉を口にした。
「俳優には大きな力があります。映像と物語は、人間性を高める役割を果たしてきました。俳優という仕事は、人々の気持ちや考え方を変えることができるのです」
人種差別をめぐる状況を変えたい、というスミスの姿勢は、ここ数年一貫している。2月にも「アメリカの人種差別問題を解決するには、現状を大きく変え、痛みを伴う変化が必要だ」と話している。
しかしそれ以前は違った。2010年には「ハリウッドの偉い人たちは肌の色なんか気にしていない、彼らが気にするのはいくら稼げるかだ」と発言していた。当時スミスは、俳優活動と歌手活動で巨額の富を築いていたため、ハリウッドでの人種差別に対して盲目になっていたのかもしれない。1999年には「ハリウッドで活躍するために、黒人でいて良かったと思う時代だ」とも話していた。
しかしここ数年、スミスは苦しい時期を過ごした。巨額の予算を投じた映画が何本も失敗した。その結果スミスはこれまでとは違う扱いを受け、仲間の俳優たちが直面してきた苦しみに気付いたのかもしれない。
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。
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