『最高の花婿』―安全な米国型移民政策を/宿輪純一のシネマ経済学(97)

日本では移民に対する"抵抗感"が強い。それは様々な外国人に犯罪が多いということが一因である。
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(QU'EST-CE QU'ON A FAIT AU BON DIEU?/SERIAL (BAD) WEDDINGS /2014)

美しい自然のフランス西部に位置するロワール地方を舞台にした、少し地味だが笑いと感動の良質のフランス映画。2014年のフランス国内興行成績No1。ストーリーにも魅了されるが、夫婦で父母役のクリスチャン・クラヴィエとシャンタル・ロビーはフランスではコメディーに定評がある名優。

フランスに住む一家の4姉妹が、それぞれアラブ人、ユダヤ人、中国人と結婚、末娘がアフリカ系男性の婚約者を連れてきたことから巻き起こる国際的なフランス式ホームコメディー。フランスらしい感覚のジョークを交え、フランスでは進んでいる異文化の受入れに苦労しながらも、逆に家族愛を強めていく。

夫クロード(クリスチャン・クラヴィエ)と妻マリー(シャンタル・ロビー)のヴェルヌイユ夫妻は、娘たちがアラブ人・ユダヤ人・中国人とすでに結婚し、人種や宗教の違いからくる文化的な問題でいつも疲れていた。娘たちの結婚に祝福はしたが、キリスト教の教会で挙式もできずに、本当はとても残念だった。せめて末娘は〝フランス人″と結婚してほしいと願っていた。夫婦は末娘から恋人がカトリック教徒と聞いて嬉しくなる。

しかし、末娘が連れてきたのは、キリスト教徒でもなんとコートジボワール出身の黒人青年。家族は結婚に大反対。しかも、相手の父も結婚に反対。何が何だか分からない中「家族愛」で問題を克服していく。移民が進んでいるフランスでも文化的には苦労しているが、社会に深く溶け込んでいっていることが分かる。

中長期的な経済成長は、人口・資金・生産性(イノベーション・技術)に因数分解できる。成長戦略とはこの要素のどれを増やすかということになる。人口を増加させるというのは基本的な政策である。

日本の場合は、出生率を上げようとしているが、なかなか難航している。一方、移民についても、優秀な外国人を高度外国人財として増やそうとしたが、日本経済の低迷や給料のレベルでなかなか来ない。また建築業での人手不足を補おうと技能実習生という制度もあり建築現場で研修を受けることができるが、たった3年である。東京オリンピックの対応で外国人建設就労者という制度もあるが、これも追加3年で、しかもオリンピックが終わると廃止される。制度的に困難なのである。

しかも日本では移民に対する"抵抗感"が強い。それは様々な外国人に犯罪が多いということが一因である。犯罪を起こさない外国人を入れるには、筆者は米国に長く住んだが、米国式の「市民権」が一案と考えられる。犯罪を起こしていないこと、法律に関する知識があること、その国の言葉(英語)を理解し話せること、そして人物が"健全な精神"をもっていると判断されること等を確認し、「忠誠の誓い」をするが、それによって"治安"や"犯罪"を起こす率は減るのではないか。

"安全"は経済・金融の大前提である。最近、日本でも凶悪犯罪が増えており、また国民の礼節が失われているように思えるのは筆者だけではないだろう。経済と安全のバランスをどう均衡させていくかが、重要なポイントである。

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