オーストラリア人女性5人が、2020年にドーハ空港で銃を突きつけられ、膣内検査やその他侵襲的な医療処置を強制されたとして、カタール政府を提訴している。
女性たちは、「不法な身体的接触」と、うつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神的ダメージに対し、カタール政府が所有するカタール航空とカタール民間航空局に損害賠償を求めている。
2020年10月、空港のトイレに置き去りにされた新生児が発見された後、原告らと複数の女性(オーストラリア、ニュージーランド、イギリス国籍を含む)は乗っていたシドニー行きのカタール航空機から引っ張り出され、侵襲的な婦人科検診を受けさせられた。
未婚で妊娠した女性は投獄されるリスクのあるカタールでは、新生児の置き去りが問題となっている。
女性たちは、滑走路で救急車に乗せられて中に閉じ込められ、検査のために下着を脱ぐように言われたと訴えている、とBBCは当時報じていた。中には銃を突きつけられた人もいるという。
女性の1人、33歳の看護師は、それ以来旅行に行っていないとNew York Times紙に語った。
「あの日は、私という人間を完全に変えてしまった」
「ここにいる私たちの生活は大きく変わってしまったのに、彼らは悪びれもせず、そのまま普通に生活を続けている」
カタールの政府関係者は当初、この検査は「カタールの文化や価値観と全く矛盾する」とし、多くの論争の末、正式に謝罪した。また身体検査を手配した空港職員は逮捕され、執行猶予付きの判決が下された。
オーストラリアのモリソン首相(当時)は検査を「恐ろしい」と批判し、政府は非難声明を出した。
提訴している女性たちの代理人を務めるダミアン・スターゼイカー弁護士は英Guardian紙に「重大な人権侵害を受けた後、カタール政府に挑まざるを得なかったこの勇敢な女性たちと共に闘うことを誇りに思う」と述べた。
10月22日の夜時点で、カタール政府はこの訴訟に対し返答を示していない。
空港でその日発見された新生児は生き延び、社会福祉施設に引き渡された。この新生児の両親は後に判明したが、当局によるといずれも「アジア諸国」の出身であったという。
一般的に、カタールにおける「アジア諸国」は、多くの移民労働者の出身国である南アジアの国々を意味する。
女性だけでなく移民に対する扱いにおいても、人権活動家たちはカタールを厳しく批判している。
超保守国家であるカタールでは、婚外での性交渉は違法となっており、それにより移民女性が妊娠した場合は投獄されるリスクがある。そのため、赤ちゃんを置き去りにする人もいる。
この訴訟は、カタールで11月にFIFAワールドカップが開催される直前のタイミングで提訴されることとなった。同国でのワールドカップ開催は、巨額の賄賂と関連していると物議を醸してきた。また、海外から観戦しに来た女性ファンが、ボーイフレンドとキスやセックスをしたり、飲酒や露出の高い服装を着たりする際の扱いも懸念されている。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。