同性愛者に関するロシアのプーチン大統領の発言をめぐって、各国首脳がソチオリンピックの開会式出席を見送る中、安倍首相はロシア訪問の方向で調整している。どのような背景があるのだろうか。
■「同性愛者も安心していい。ただし……」
ロシアの「同性愛宣伝禁止法」とは、同性愛など「非伝統的な性的関係」を未成年者に知らしめる行為を禁止した法律で、2013年6月に制定された。
この法律は制定以来、同性愛者の権利を侵害していると欧米諸国から批難を浴びてきた。同時に、オリンピック開催中の同性愛者の待遇も不安視されてきた。
これに対してプーチン大統領は、1月17日に開かれたオリンピック運営ボランティアとの会合の中で、「我々の法律は、同性愛や小児性愛を未成年に向けて宣伝するプロパガンダを禁止しているのであり、同性愛者や小児性愛者を逮捕したり懲罰を与えたりしているのではない。そこを強調したい」と述べ、批難を退けた。イギリス紙のガーディアンが伝えた。
続けてプーチン大統領は、「ソチオリンピックではあらゆる差別は排除される。同性愛者も安心してリラックスしていい」と述べた上で、「ただし、子供たちには近づかないでほしい」と話した。
■欧米諸国からは批難の声
さらにアメリカのCNNは、ネットの掲示板を利用して同性愛者を誘拐しては暴行を加えるなどの活動を行っているグループについて報じ、2013年の法律制定以降、ロシアでこれらの動きが活発になっていると指摘。「同性愛者も安心していい」というプーチン大統領の発言の信憑性に疑問を投げかけた。
■欧米諸国の首脳が不参加を表明 日本は?
こういったロシアの同性愛者に対する政策に反発し、アメリカのオバマ大統領やイギリスのキャメロン首相をはじめとする欧米の首脳たちが、2月7日に開催される開会式への不参加を表明している。
一方、安倍晋三首相は、開会式出席の方向で調整している。北方領土問題解決のためにはプーチン大統領との関係強化が必要との考えだ。会談が実現すれば、2012年の就任以来5度目の首脳会談となる。
ただ、ソチオリンピックが通常国会の会期中であることに加えて、開会式当日が「北方領土の日」に当たることから、安倍総理大臣は慎重に対応を検討してきました。
こうしたなか、安倍総理大臣は、プーチン大統領の招待に応じることで個人的な信頼関係をさらに強めたいとして、開会式に出席する方向で最終調整に入りました。
安倍総理大臣は、来月7日の北方領土の返還を求める全国大会に出席したあと、直ちにソチに向かうことを検討しています。
(NHKニュース「首相 ソチ五輪開会式出席で調整」より 1月17日 4時0分)
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