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突然ですが、「出入国管理及び難民認定法」ってご存じですか? いわゆる「入管法」と呼ばれるもので、法務省管轄の法律です。
その第一条には、「本邦に入国し、又は本邦から出国するすべての人の出入国の公正な管理を図るとともに、難民の認定手続を整備することを目的とする」と定められています。出入りだけでなく、日本にいる間の動向も管理します。
大ざっぱに言えば、「外国人=日本の国籍を有しない者(同法律より)」の入国・上陸・在留・出国・強制退去、日本人の出国・帰国、難民の認定などを定めた法律です。
この法律を行政に落とし込んだのが、出入国管理計画です。法務省ではおおむね5年ごとに新しい計画を立てており、6月末に新計画の案が発表されました。そして今、この計画に関して意見を募集しています。
アムネスティは、現状の計画案では非日本国籍・無国籍の人たちの人権がおびやかされかねないと、危惧しています。
法務省が出している計画案概要を見ると、その基本方針は
● 我が国経済社会に活力をもたらす外国人を積極的に受け入れていく
● 少子高齢化の進展を踏まえた外国人の受入れについて、幅広い観点から政府全体で検討していく
● 開発途上国等への国際貢献の推進を図る観点から、新たな技能実習制度を構築する
● 受け入れた外国人との共生社会の実現に貢献していく
● 観光立国の実現に寄与するため、訪日外国人の出入国手続を迅速かつ円滑に実施する
● 安全・安心な社会の実現のため、厳格かつ適切な入国審査と不法滞在者等への対策を強化していく
● 国際社会の一員として、難民の適正かつ迅速な庇護の推進を図っていく
とあります。
えっ、どこが問題なの? これができたら、やっと日本も本当のグローバル社会になるかも。と思う方もいるかもしれません。でも、ちょっと待ってください! 実際の計画案文書を読むと、違ったニュアンスが浮かび上がってきます。
アムネスティが何を心配しているか、何点かここにお伝えします。
1. 「外国人」を補てん労働力としか見ていないのでは・・・
案を読むと、少子高齢化で人口が減少する将来を見据え、「経済成長」に寄与する専門知識や技能を持った「外国人」がもっと日本に来てくれるように、柔軟な入管施策で対応しましょう、とその趣旨を要約できます。
東京オリンピック・パラリンピック関連ニュースで、お金も資材も足りないというニュースが最近よく報道されていますよね。もちろん、人手も足りません。そこで政府は緊急措置として、期間を区切って建設分野での外国人受け入れを昨年決定しました。計画案では、今後もこうした「緊急」労働ニーズに対応するために、関係産業や省庁と調整して、適切な管理体制を築いていきましょう、とあります。
しかし、短期的な労働力確保のために人材を投入するということは、その労働者が搾取されやすい恐れがあるのは、この件に限ったことではないですよね。
アムネスティは、管理体制だけでなく、運用面で、その人の権利を守るという観点を入れる案とすることが必要だ、と考えます。
2. 技能実習制度がはらむ根本的な問題解消のないまま、制度拡大を掲げている
技能実習制度とは、開発途上国の技術力や知識向上のため、日本での「実習」を通じて人材育成に貢献することを目的とし、そのために特別な滞在許可を与えます、というものです。
しかしその現状は、安価な労働力確保に利用され、技能実習生が過酷な扱いを受けているという報告が、国連の各種人権機関から繰り返し出されています。法務省もこの実態を認めており、今回の計画では、通報制度や罰則規定を提案しています。
でも、起きてしまったことへの対応策だけでは、実習生が搾取されやすいという構造的な問題を解消することはできません。
計画案には、技能実習制度の対象職種の拡大や実習期間延長が含まれていますが、アムネスティは、制度と運用に実習生の権利保障の観点がしっかり盛り込まれるまで、安易に広げるべきではないと考えます。
3. 難民認定では、相変わらず人権保護の観念が欠けている
計画案は、難民認定が厳しすぎるという声があることは認めつつ、難民申請が非常に増えている上に、就労目的や強制退去回避目的が疑われる申請も多く、こうした悪用を精査するために全体に審査に時間がかかるようになっていると指摘しています。そこで、申請内容の本格調査の前に事前振り分けを導入してスピードアップを図る、現在は同じ内容で何度も受け付けている再申請に対し、新たな事情がある場合に限定することを提案しています。さらに、申請中は送還しないという原則に例外を設けることも検討するとあります。
「真に庇護すべき者とそうでない者を明確に区別し、適正・迅速な案件処理を行う」ことで「真の難民を迅速かつ確実に庇護する」とありますが、例えば何を基準に事前振り分けをするか具体的な記述はありません。アムネスティをはじめ難民問題に取り組む国内外のNGOは、他国でみられるように出身国別や事情の類型で機械的に振り分けるのではないか、と懸念しています。
難民制度は人権の観点から生まれたものです。効率を前に、何のために、何から庇護するのか、という原点が忘れ去られているのではないでしょうか? 庇護申請者を危険な場所に決して送り返さないという国際的な大原則を破ることすら考えていることが臆面なく記されているのを見ると、そう思えてなりません。
まだまだ懸念点はあります。詳しくは、こちらをご覧ください↓↓↓
そして、「なるほどそれは心配だ」と思ったあなた!
法務省に、こうした懸念を伝えてください。
▽▼▽ 提出先:電子政府の総合窓口から ▽▼▽
▽ 計画案の資料
★★★パブリックコメントの締切:2015年7月25日(土)18:15(必着)★★★
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■□■ この件に関するお問い合わせ ■□■
▽ 意見募集に関して
法務省入国管理局総務課企画室 電話:03-3580-4111(内4330)
▽ アムネスティの懸念事項について
アムネスティ日本・事務局 info@amnesty.or.jp
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