おかげさまで4月6日に発売になった「戦略思考の広報マネジメント」は、話によると順調に売れているそうです。ご購入の皆さま、ありがとうございます。
というわけで、短期連載第2回です。今回からは同書で取り上げている広報力の8つの視点をひとつずつ、少しだけ見ていこうと思います。最初は、すべての広報活動の起点となる「情報収集力」です。
地味に感じる人もいるかもしれません。しかし、ここでどの情報にたどり着くかで、その後の活動に大きく影響してくると、わたしは思っています。「孫子の兵法」ではありませんが、攻めるにも守るにも情報は必要なのです。その意味で、情報収集力とは広報力の土台とも言えるのではないかと。
「情報収集力」とは何を指すか。モニタリング? ソーシャルリスニング? 社内ヒアリング?
わたしたちは「自社や業界・競合に対するメディアの評判や、ステークホルダーの動静について収集・把握する能力」と定義しました。言い換えれば"自社の広報環境を把握する力"です(個人的には読書だって、映画鑑賞だって、人間観察だって「情報収集」ですが、あくまでも「企業の広報力」ということなので、いったんおいておきます)。
さて、"広報環境を把握する"とはどういうことか。
PRに携わっている方は身にしみてわかるかと思いますが、今の広報部門に求められているのは、商品やサービスの情報を発信してメディアに取り上げてもらうにはどうすればいいかと考えて実行する、ということだけではありません。もっと俯瞰して会社とステークホルダーの関係を捉えないといけない。そうです。「広報は経営である」んです(「【悲報】露出だけを追い求めるPRの時代はもう終わっているらしい」ということです)。
そこで求められる情報は、メディアの捉え方や論調はもちろんのこと、企業経営に対する株主や取引先、従業員、お客様の評価・評判だったり、イシューマネジメントの観点で言えば、自社に影響のありそうな法規制や行政の動きも含まれたりします。もちろん、競合の動きも重要です。
自ら書いておきながら恐縮ですが、大変ですね・・・
大事なのは、広報戦略を考えるために必要な情報を収集する能力を持っているかということだと思うのです。そのうえでこそ、本当の意味で効果的な広報活動が実現できるのです。より良い経営環境をつくろうという意識があれば、広報の目線もメディア一辺倒から、生活者や顧客の客観的評価といった自社の広報環境へと広がってくるはずです。
また、当たり前のことですが、メディアが見ている先も、生活者です。広報部門がその情報を収集するのは、当然といえば、当然なのです。
わたしたちが行った広報力調査では、企業の広報責任者と、結果の評価分析方法を検討するにあたり本調査に協力いただいた専門家との間に、情報収集に対する意識のギャップがあることが浮き彫りになりました。たとえば、専門家の皆さんは「生活者・顧客の意識・実態や、自社への評価を定期的に収集している」という設問への回答を最も重要視しました。他方、それを実践していると回答した企業は20.3%しかなかったんです。
一方で、76.2%が「自社に関する新聞・雑誌などでの報道について、継続的にモニタリングを実施」と答えています。かなり対照的な結果ですね。
ちなみに、この情報収集力で断然トップだったのは、「電力・ガス」業界でした。平均スコアは60.3。二位の「食料品」業界が49.2で、全体平均スコアが37.0ということを考えると、どれだけすごいかお分かりいただけるでしょう。
そういえば、「電力・ガス」業界は総合評価でも一位でした。昨今、厳しい経営環境にある同業界では、広報部門がコミュニケーションの相手の考え方を真剣に理解しようとしている結果が、こうした形で表れているのかもしれませんね。
ソーシャルメディアの普及によって、把握すべき情報は膨大に、そして多様になりました。他方、システムの発展もあり、一部はの収集は容易にもなっています。広報として本当に必要な情報を収集できているのか。「広報は経営である」という視点から再点検してみてはいかがでしょうか?(ヒントはもしかしたら書籍に隠れているのかも?!)
詳しい調査結果はこちらをご参照くださいませ。