米国を揺るがすアメフト「国歌斉唱」問題、NFLの罰金ルールに選手会が反発

起立義務づける内容が波紋呼ぶ
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国歌斉唱中に片膝をついて起立を拒否するサンフランシスコ・49ersの選手ら=2017年10月、テキサス州ヒューストン
USA Today Sports / Reuters

アメリカプロフットボールリーグ(NFL)の選手多数が、試合前の国歌演奏時に起立することを拒否していた問題で、NFLは5月23日、選手らに起立を義務づけ、違反すれば罰金を科す新たなルールを導入すると明かした。秋から始まる今シーズンから適用するとしている。

起立したくない選手は国歌の斉唱が終わるまでロッカールームにとどまることを認める方針で、反発が予想される選手らに一定の配慮をした格好だ。

この問題は2016年、当時サンフランシスコ・49ersに所属していたコリン・キャパニック選手が国歌斉唱時に起立を拒否したのがきっかけだった。

キャパニック氏は、黒人や有色人種に対する差別的な事件がアメリカで相次いでいることに抗議するのが狙いだった。

この出来事に触発されたほかの選手らが次々と同調。賛否が割れる社会問題に発展した。

トランプ大統領が2017年9月、「偉大なアメリカ国旗(あるいは祖国)を侮辱することは許されない」などとTwitterで批判すると、選手らの間で反発する動きが拡大。解決の糸口が見えなくなっていた

NFLはTwitterの公式アカウントでルールの変更を公表した。その中で、ロジャー・グッデル・コミッショナーは「不幸にも、グラウンドでの抗議運動が多くの選手たちに愛国心がないという間違った認識を生んでしまった。だが、それは事実ではない」と指摘。その上で、「今回の決定が、試合と素晴らしい選手たち、さらにはファンたちのためになるのだと信じている」などと述べた。

新ルールは、試合開始前の国歌斉唱時、起立と国旗、国歌に敬意を払うことを選手らに義務づけた。違反すれば、各チームが決める方針にそって罰金も含めた処罰を科せられるという。

一方で、起立したくない選手は斉唱が終わるまでロッカールームにとどまることを認めるという。

NFL側がこの時期に新ルールを決めた背景には、今シーズンが始まる前に事態を正常化させ、開幕後に混乱を生じさせないよう狙ったとみられる。選手らに配慮する項目を盛り込んだのも、そういった思惑が透ける。

だが、選手会は早速、新ルールへの反対声明を発表。「選手側に相談もなく決めた」となどと新ルールの見直しを要求しており、問題が収束するかは不透明だ。