アイオワ州立大学ロイド家畜医療センターの メアリー・サラ・バーグ 博士が、3Dプリント技術を使った猫用義足を開発しました。バーグ博士は、この義足は猫が成長するにつれ足の骨に融合し、本当の意味で体と一体化するとしています。
アイオワ州ネバダ市でキャンプ場にすてられていた生まれたばかりの子猫 ヴィンセント は、先天的に後ろ足の「すね」から先がありませんでした。普通であれば、こうした障害を抱えて生まれた動物は獲物をとらえることもできず、結果として長生きは望めません。子猫に脚がないことに気づいた発見者は、アイオワ州の動物保護施設にヴィンセントを運びました。
保護施設の職員シンディ・ジョーンズはヴィンセントを不憫に思い、自宅に引き取って育てることにしました。シンディの娘はアイオワ州立大学で獣医学を学んでいました。そしてたまたま母親が連れ帰った後ろ足のない猫を見て、大学の教授ならヴィンセントに何かできるかもしれないと考え、動物整形外科を研究するメアリー・サラ・バーグ博士に連絡をとりました。
メアリー・サラ・バーグ博士は、ヴィンセントの後ろ足が欠損している理由の特定には至らなかったものの、ヴィンセントを歩けるようにしてやりたいと考え、人工装具メーカー Biomedtrix に連絡をとります。そして 3D プリント技術を使ってチタン製の釘脚をカスタマイズ。さらに接合部はヴィンセントの大腿骨に直接埋め込む手法をとりました。
話だけを聞くとなんだか膝が痛くなってきますが、実はこうすることで成長するにつれ義足の接合部に骨が覆いかぶさり、強度を増すことができます。この先のヴィンセントの成長による体重増加を考えると最も適した装着方法だったといえます。
ただし釘脚の装着部から先は皮膚を突き抜けてそのまま表に出る格好となります。このため1日に2回は傷口の部分に抗生物質のスプレーし、感染を防止しなければなりません。
手術に成功したヴィンセントはすぐ新しい後ろ足に慣れ、軽やかとまでは行かないものの病院の待合室を歩き回り、周囲を和ませるまでに回復しました。
バーグ博士は、ヴィンセントのように義足を付けてもらえるは動物は数えるほどしかないと言います。そしてヴィンセントでの成功事例は、類似した障害をもつ他の動物を助けるための望みになると語りました。
なおヴィンセントについては今後さらに成長したとき、義足を身体に合わせて延ばすことも計画されています。
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(2015年12月8日 Engadget日本版「後ろ足を忘れてきたネコ、海賊風の3Dプリント義足を得て歩き始める。病院待合室をひょこひょこと散歩」より転載)