2016年、D LiuたちはDNA「一塩基編集」技術を開発した。この系により二本鎖切断を起こさずに、DNA内でC–G塩基対をT–A塩基対へ変えることができる。この方法では、シチジンデアミナーゼをRNA誘導性の不活性型Cas9複合体に連結することにより部位の選択が可能になる。
しかし、この系では疾患を引き起こすことが知られている一塩基多型のおよそ半分は修正できない。今回D Liuたちは、A–T塩基対のG–C塩基対への変換を目的とした、ゲノム塩基編集技術の次の段階について報告している。
彼らはRNAに作用する細菌のアデノシンデアミナーゼを元にして、7回の選択と改良を行い、ABE7.10を作り出した。この酵素も同様にRNA誘導性の不活性型Cas9複合体に連結され、DNAを基質として用いる。
その結果、ゲノム中の複数の部位や状況での修正効率は平均53%で、変異が起こる確率も非常に低かった。重要なことに、この系は、疾患に関連した一塩基多型の修正にも、疾患を抑制する一塩基多型の導入にも用いることができる。
Nature551, 7681
原著論文:
doi: 10.1038/nature24644
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