自民・公明両党は11日午後の与党協議で、集団的自衛権の行使などを可能にする新たな安全保障法制の法案内容に合意した。政府は14日に法案を閣議決定後、国会に提出。今夏の成立を目指す。
日本への直接的な攻撃に対してのみ許されてきた自衛隊の武力行使は、一定の条件を満たせば他国が攻撃を受けた場合でも可能になる。米軍をはじめとした他国軍への後方支援も、これまでのような地理的制約がなくなる。
昨年5月に自公の間で始まった安保法制の議論は、法案という具体的な形で国会に示されることで、与野党の論戦が本格化する。安倍晋三首相は4月末に訪米した際、今夏までに法案を成立させることを事実上約束しており、今国会の会期は8月まで延長される見込みだ。
与党協議の座長を務める自民党の高村正彦副総裁は、会合後に会見し、「九十九里来たが、道半ば。国会で十分に審議することによって国民の理解が深まる」と語った。
<「グレーゾーン事態」も了承>
与党協議で自公が合意した法案は大きく2本。武力攻撃事態対処法や周辺事態法といった現行法の改正案10本を「平和安全法制整備法案」として1つに束ねたほか、自衛隊の海外派遣を随時可能にする「国際平和支援法案」を新たに作った。
日本が直接攻撃された場合の対応を定めた現在の武力攻撃事態対処法は、他国が攻撃された場合でも、日本の存立に関わるなどの要件を満たせば自衛隊が反撃できるように改正する。朝鮮半島有事を念頭にした周辺事態法は、後方支援の対象を米軍以外に広げるとともに、自衛隊の活動範囲も制約をなくす。
新法となる国際平和支援法案には、国会の例外なき事前承認を自衛隊派遣の要件にすることを盛り込んだ。
与党協議の座長代理である公明党の北側一雄副代表は、新法制によって「自衛隊の派遣が広がることは間違いない」とする一方、「われわれ(公明党)の主張は相当盛り込めた」と説明。国会の関与のあり方など、一定の歯止めをかけたと主張した。
このほか両党は、武装勢力が離島に上陸するなど、日本への武力攻撃かどうか判断できない「グレーゾーン事態」が起きた場合に、警察権に基づく自衛隊の出動を迅速化する方策についても合意した。14日に閣議決定する。
(久保信博)