誤解を恐れずに言えば、テクノロジー企業のPR職に就いて20年、大手PR会社勤務歴が10余年の今、PRにおける課題解決の最短ルートは現場にあることが多く、事業会社の若手広報だった時代と比べてPR勉強会に行く機会が減りました。
ソーシャルメディアの浸透で一種のPR流行りと言える今、広報ノウハウ、経験談、資格の取り方、賞の獲り方、キャリア構築、メディア動向などをテーマにするPR勉強会は日々、数多とあります。
しかし、実際に結果を生むPR活動は、PR素材について関係者が秘密保持契約(NDA)に則って洗いざらい話し、PRのプロが実経験に基いた具体的戦略を立てて初めて進むからです。
企業の情報設計・流通を担う広報PR、特にPR会社に上がってくる情報は、事業運営のなかでろ過された上澄みが多く、それだけを見ても、企業やその環境の全貌はなかなか分かりません。
そこでわたしは解決策として、経営そのものを捉えるマーケティングの勉強会や、専門領域であるテクノロジー分野のネットワークを運営して、キーパーソンから直に話を聞き、情報およびテクノロジーの相関性を把握するようにしています。
こうして得た知見を自分自身の担当案件のよりよいPR活動に役立てながら、プロボノ(無償)の運営支援で参加者の役に立ち、ブログで明文化し共有して読者の役に立つ、三方よしを実現しています。
とはいえ、食わず嫌いと自己過信は良くありません。業務と生活とプロボノの合間を縫って、自社のセミナーはもちろん、昨年10月の「パブリックディプロマシー・サロン」 ジム・ハーフ氏を囲んで~以降、今年に入って意識的に1月にはインフォテリア、広報・IR室の長沼 史宏氏が開く広報勉強会、2月にはIABC JAPAN情報公開サロン、3月にはFCG総合研究所の『広報ウーマンのための勉強会・交流会』その他、広報PRを対象とする勉強会に参加しています。
ハーフ氏はPRにおける調査と経験の重要さ、長沼氏はPRパーソンの横のつながり、IABCはグローバルプラクティス、広報ウーマンのための勉強会は広報組織運営など、それぞれからなるほどと糧になるものがあります。
こうしてPRの現場と各種の勉強会やネットワーキングを通して思うのは、PR活動の効果を可視化するKPI(重要業績評価指標)が必要だ、ということです。
PR活動を企画する時、KPIを設定すると達成できないときに自分の首が締まる...と恐れて避けたい心情が湧くものですが、ゴールに向けた進捗は測らないとどのくらい進んだか分からず、改善できません。例えるなら健康診断でお腹周りを測ってこそ、メタボや栄養失調を防げます。
そこで実際に、PRのKPIをしっかり設けて、戦略企画、実行、改善の高速ループを回しているBtoB・IT企業の知見を共有することで、PRがPR担当者の自己満足にならず、全社の理解と協力を得て、企業を成長させる活動となるよう、ITproマーケティングに寄稿しました。
KPIについては、次世代マーケティングプラットフォーム研究会第12回でも、マーケティング分野に絞ってディスカッションします。オイシックスの奥谷孝司氏をモデレーターに、ハッピー・アナリティクスの小川卓氏、スプリンクラー・ジャパンの八木健太氏、アイ・エム・ジェイの吉川達彦氏などが登壇します。
一言でテクノロジー企業といっても多彩で、わたし自身、通信、半導体、データセンター、エンタープライズソリューション、セキュリティなど様々な企業のPRを担当してきました。いずれもエンジニア、データアナリストなど、PRとはあまり接点のないタレントがビジネスの根幹を作っています。
ぜひこうした方々にもPRやマーケティングの資産を活用いただき、それぞれが自分自身、自社、社会の成長につなげる協力や協業の輪が広がればと思います。我田引水で恐縮ですが、寄稿、イベントともよろしければお付き合いください。
コウタキ考 転載