受刑者をプログラミング教育で更生 カリフォルニアの刑務所の取り組みが負のサイクルを断ち切る

カリフォルニア州のサン・クエンティン州立刑務所は、受刑者を対象としたコンピュータ・プログラミングのクラスで人材を育てる職業訓練を施すことにより、受講者の再犯率を抑えることを目指している。

カリフォルニア州マリン郡にあるサン・クエンティン州立刑務所。収監されている受刑者の中には、長期の実刑判決が下されたために、インターネットを一度も使ったことがない者もいる。彼らにとって、プログラミングを学ぶのはそれほど簡単なことではなかった。

しかし、ギャリー・バレンティーノ受刑者はひるんでいない。

「これは簡単にマスターできるものじゃない」。収監されて約20年になるバレンティーノ受刑者は、サンフランシスコのテレビ局「KPIX-TV」のニュース番組KPIX 5 Newsの取材に対し、新たに習得した自らのスキルについてこう語った。「常に新しく学ばなければいけないことがあるし、挑戦を楽しみにしているんだよ」

KPIX 5 Newsによると、バレンティーノ受刑者は、この刑務所の男性受刑者を対象としたコンピュータ・プログラミングのクラス「Code.7370」の受講生のひとりだという。このコースは、サンフランシスコの非営利団体「The Last Mile」が運営しているもので、21世紀の労働力市場で必要とされる人材を育てる職業訓練を施すことにより、受講者の再犯率を抑えることを目指している。

「仕事を持つことこそ、社会復帰を成功させるカギであり、収監を繰り返してしまう負のサイクルを断ち切るものです」と、The Last Mileの共同創設者ビバリー・パレンティ氏は、KPIX 5 Newsの報道のなかで述べている。

米国立司法研究所の調査によると、アメリカでは再犯率が非常に高い。2005年の調査では、受刑者が出所後3年以内に再び逮捕される割合は67.8%。5年以内では、この数字が76.6%に増加することが明らかになっている。

「USA Today」の記事によれば、このクラスの目的は、その多くは、これまでコンピュータやスマートフォンを触ったこともない受刑者を対象に、6カ月間のコース終了時点で、ウェブ開発者として入門レベルの仕事に就ける程度のノウハウを教えることだ。

The Last Mileは、ソフトウェアエンジニアリングのカリキュラムやプログラミングコースを開発しているHack Reactor社から派遣されたインストラクターたちと協力して、サン・クエンティン州立刑務所の受刑者に週4日、授業を行っている。

KPIX 5 Newsが指摘するように、このクラスは受刑者にメリットがあるだけでなく、納税者の負担も減らす可能性を秘めている。例えば、カリフォルニア州では、受刑者の収監費用が1人あたり年間6万ドルほどの負担になっているため、コース受講生18人の再犯率がゼロになれば、年間100万ドル以上を節約できるのだ。

なお、サン・クエンティン州立刑務所は以前から受刑者の教育に力を入れており、演劇や美術のワークショップが開催されるほか、大学の学位を取得できる「プリズン・ユニバーシティー・プロジェクト」も、1996年から実施されている(受刑者に哲学を教える体験を語るデイモン・ホロヴィッツ氏のTED講演はこちら)。文末スライドショーでは、受刑者たちが参加する美術や即興歌唱のクラス、演劇体験の様子が紹介されており、質の高い美術作品が生み出されていることもわかる。

この記事は最初にハフポストUS版に掲載されたものです。

[日本語版:湯本牧子/ガリレオ]

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