突然ですが、みなさんは仕事で英語を使ったことがありますか? または、今後使う予定がありますか?
自分が関わっているMovable Typeはもともとアメリカで生まれたソフトウェアなので、海外にもユーザーがたくさんいます。サービスの性質上、海外のユーザー、スタッフと英語を使ったやりとりも多く、自分もたくさんのユーザー、スタッフと英語でやりとりをしてきました。
自分は英語のエキスパートではなく、英語力もそれほど大したことはないのですが、ひいひい言いながら、なんとか仕事で英語を使ってきました。
今回は、自分が今まで苦労した経験から、
- 仕事で英語を使うことになったとき、まず最初にするべきこと
- 実際に仕事で英語を使っていて感じたこと
について、簡単にご紹介します。
英会話学校に通う前にするべきこと
英語にかぎらず、語学には主に4つのスキルが必要と言われています。
- リーディング (Reading、読解)
- ヒアリング (Hearing、聞き取り)
- ライティング (Writing、記述)
- スピーキング (Speaking、口述)
英語で仕事をすることになった人は、まず真っ先に英会話教室に行く傾向が高いようです。しかし僕は
「とにかく、リーディングの練習をすること。その後にヒアリング」
が大事だと感じました。英会話の練習は、本当に最後の最後でもかまわないと思います。その理由は以下のとおりです。
海外のスタッフとのやりとりはメールかオンライン通話
日本にいて海外の人と仕事をする場合、コミュニケーションの手段は大きくわけて
- メール
- Skypeなどのオンラインビデオ通話、国際電話
のいずれかになります。言葉を変えると「文章」か、「音声」か、の違いです。
このうち、圧倒的に多いのが、時差を気にせずに情報のやりとりができる「メール」です。
海外のユーザーからのクレームやサポート依頼。あるいは同僚からの資料のシェア、現地の状況報告など、海外スタッフやユーザーとのやりとりは、メールがほとんどを占めます。
英語で仕事をしているときは、これら大量の英語メールを、いかに早く正確に理解するか、がとても重要でした。コミュニケーションの第一歩は、「相手が言いたいことを理解する」ことから始まります。ですので、まず最初は、「相手の言っていることを理解する能力 = リーディング」が一番大事だと感じました。日本語でもそうですが、相手の言いたいこと、主張を理解しないと、それに対する返答やリアクションはできません。
次に、相手の言葉を聞きとる「ヒアリング」。
実際にネイティブスピーカーと会議をしてみると、とにかく生英語のスピードの早さに驚きます。こちらもメールと同様、まず最初に相手が何を言いたいかを理解しないと、そもそも会話が成立しません。このため、ヒアリングの能力がとても重要になります。
ところが、いざヒアリングを鍛えようとしても、そもそも知らない単語や熟語を使われると、「その部分がすっぽり聞き取れない」、ということが良く起こります。自分のボキャブラリーにない単語や熟語は、言葉で話されても、まったく聞き取れないのです。
こういった「抜け」を埋めるためには、普段から言葉としての「単語」、「熟語」を蓄積する勉強 = ボキャブラリービルディング、が大事です。ボキャブラリーを増やすためには、実際にその単語を読んで記憶すること = リーディングによる記憶、が鍵をにぎります。リーディングで英語の文章に触れ、同時に単語や熟語を頭のなかに記憶して、その記憶をもとに相手の話していることを理解する、という流れです。
このため、実際に仕事で英語を使うことになった人には
「まず最初に、大量の英語を読むこと」
そして
「ボキャブラリーを増やして、聞き取れるようにすること」
をおすすめします。
これら2つの勉強は、英会話学校に通わなくても、自分一人で、空いている時間をつかってできる勉強です。まずは、「読む」、次に「聞く」能力を鍛えること。英会話の勉強は、その後でもじゅうぶん間に合います。
実際に仕事で英語を使ってみて感じたこと
実際に仕事で英語を使ってみて、どんなことを感じたか。僕は
- 最初は英語が通じること自体が嬉しかった
- しかし、そんな時期はすぐに過ぎて、コミュニケーションのむずかしさを思い知る
- 英語が使えることと、コミュニケーションを取ることは別物
という感想を持ちました。
最初のうちは自分の英語が伝わるという事実が、単純に嬉しかったです。しかし、そんな嬉しさはすぐに無くなり、コミュニケーションの大変さを感じました。
仕事で使う以上、大事なのは
- 自分の意図を相手に伝えて理解してもらう
- ときにはこちらが望んでいることを相手に理解してもらう、協力してもらう
ということです。自分の意見を伝え、相手の同意をえる。ときにはこんこんと理屈を説明して、相手を説き伏す必要もあります。そんな仕事上のコミュニケーションの大変さは、日本語だろうが英語だろうが変わりません。母国語でコミュニケーションを行うことができないと、そもそも英語でのコミュニケーションはできないものです。最後は根本的なコミュニケーション能力を問われます。
ですので、これから英語を本格的に勉強する方、英語を使って仕事をしようと思っている方は、英語だけでなく、日本語の運用能力、コミュニケーション能力を同時に意識することを強くおすすめします。
逆に言うと、自分の意図を伝え、相手に理解してもらえれば、多少英語がブロークンでも構わないわけで、細かい文法や単語を気にする必要はありません。臆することなくコミュニケーションを取っていくことによって、英語の運用能力はどんどんアップします。
(2014年8月26日「Six apart ブログ」より転載)