『朝日新聞』が掲載していた「ゆるキャラ頼みでいいの? 宮崎知事『GP投票は仕事』」という記事がいろいろ興味深かったので、これについて少し。
1 記事の紹介
「全国のゆるキャラ人気の日本一を競う『ゆるキャラグランプリ』」が開催されており、「宮崎県の『みやざき犬』も参戦中だが、目標の10位に入ってない」そうです。
そのため、「河野俊嗣知事は、勤務時間内に庁内放送で職員に投票を呼びかけ、背水の陣で挑」んでいるわけですが、「キャラに頼った県のPR手法には、内部から冷ややかな声も聞こえてくる」という記事です。
投票は11月8日までで、「1メールアドレスにつき1日1回投票でき」、宮崎県は「10位以内を目標にするが、10月7日時点で18位(6万7672票)」だそうです。
「10位の『かわりみ千兵衛』(福岡市、9万692票)とは2万票以上の差はあるものの、『トップ10の脈はある』」として、「イベント会場や経済団体に出向き、協力を呼びかけている」としています。
2 ゆるキャラ
日本の「かわいい」は何故世界で受けるかということについて以前触れたことがありますが、そこの中で、日本の「かわいい」には、ある意味何でも包含してしまうところがあるということについて言及させてもらいました(『「かわいい」論』四方田犬彦)。
おそらくゆるキャラというのは、その典型で、どう考えても「かわいい」とは思えない、気持ち悪いとしか言いようのないものが結構上位に入っていることもあります。
要はインパクトで、まずは名前を憶えてもらうという戦略なのかもしれませんが、そうなると何が受けるのかわからないという話で、狙って一発当てるというのがかなり難しくなっております。
余談ですが、ブログを書いていても同じで、これはいけると思った記事が全然だめだったり、それほど期待していなかった記事が結構アクセス数を稼ぐこともあり、公開してみないと何が受けるかわからない状態で、いつも試行錯誤中です(気がつけば2年)。
3 手段と目的
今回の記事を受けておもったのが大きく2点です。1つ目が本来ゆるキャラを使ってPRを行うべきなのに、ゆるキャラの順位を競うことが先に出てしまうのは主客(手段と目的)が逆転しているのではないかということ。
そして、2つ目が、勤務時間中に(職務として)こうした投票を呼びかけたり、働きかけを行うのはどうかということです。
試験の順位などが典型ですが、本来学力アップのためにあるべき試験が主客が逆転してしまうと試験の順位を上げることだけに関心がいってしまい、カンニングなどの行為が横行することとなります(中国のカンニング事情と大学の対抗策)。
今回のゆるキャラも同じような感じで、本来はキャラの知名度を通して各県の魅力をという話だったと思いますが、それに動員をかけてまでとなると、単に順位を上げることにだけに関心が行き過ぎているような気がしてなりません。
確かに当該県のイメージアップなどは重要な仕事で、ゆるキャラがそれに繋がるという理屈もあるのでしょうが、これが県の行う仕事と言えるかというと多少疑問です。
私は先に述べたように動員そのものに疑問を感じているので、そういう思いが強いのかもしれませんが、「イベント会場や経済団体に出向き、協力を呼びかけている」よりもっと大事な仕事があるのではないかという気がしてなりません。
4 最後に
ただ、どうしても地方自治体の仕事というと、補助金のしばりや、法定受託事務が多いことなどから、国からの下請けのようなものが多く、独自色を出す機会が少ないのが実情です。
また、自治体が勝手に何かやると目立ってしまい批判の対象になりやすいということも、こうした傾向により拍車をかけているという面も否定できないので、正直あまり批判したくはないのですが、私的にはやはり県のやるべき仕事ではないと考えているという話です。
(2013年10月23日の「政治学に関係するものらしきもの」から転載しました。)