韓国は不動産地獄だ

ソウルのマンションの住人が、母子・父子家庭や障害者が引っ越してくるのを防ぐため実力行使に出たと報じられた。韓国土地住宅公社が売れ残りのマンション52戸を買い取り、母子・父子家庭や障害者らに賃貸したのだが、資産価値が下がることを懸念した元々の入居者らが、引っ越しを阻止するというとんでもない話だ。
|
Open Image Modal
Greg Samborski via Getty Images

ソウルのマンションの住人が、母子・父子家庭や障害者が引っ越してくるのを防ぐため実力行使に出たと報じられた。韓国土地住宅公社が売れ残りのマンション52戸を買い取り、母子・父子家庭や障害者らに賃貸したのだが、資産価値が下がることを懸念した元々の入居者らが、引っ越しを阻止するというとんでもない話だ。記事を読んであっけにとられた。とはいえ、マンション団地や住宅商業複合施設の中で賃貸住宅に住む人への差別待遇は、もはや不思議なことでもない。

その前には、首都圏各地で、建設会社が売れ残ったマンションを値下げして売却したところ、売り出し価格で購入した当初の入居者らが、値下げ価格で購入した新規入居者たちの引っ越しを実力で阻止し、深夜に入居して来るのを防ぐため、順番を決めて不寝番の見張りを立てたり、見張りをかいくぐって何とか入居した家の下に押しかけて罵詈雑言を浴びせる場面が放送されたこともあった。なぜそんなことをするのか。「大事な財産を守るためだ」と話す入居者もいた。韓国の最低賃金(1,399万4,640ウォン=約139万2千円)でソウルで賃貸マンションに入居しようと思ったら、一銭残らず貯金しても22年5カ月かかるという報道もある。

(訳注:韓国では賃貸物件の入居前に、まとまった金額を一括で貸主に預け、退去時に返金を受ける「チョンセ」というシステムが一般的だ。聯合ニュースによると、2014年7月第1週時点でソウルの賃貸マンションのチョンセ平均額は、約3億1348万ウォン=約3118万円)

これは正常な社会ではない。不動産のせいで争いが絶えない社会、汗水たらして生産した価値を不動産富裕層が横取りしていく社会、財閥が製品の質やデザイン、マーケティングより土地投機に血眼になる社会、若者の将来就きたい職業が不動産賃貸業という社会が正常な社会なはずがない。そんな社会は地獄そのものだ。不動産問題は就職、結婚、子育て、教育、消費、老後など人生のすべてで全否定的な影響を及ぼす。昔、イギリスでは羊が人を殺すと例えられたが、韓国社会では不動産が人を呑み込んでいる。

これは人間の生きる道ではない。不動産問題の根本的な解決なしに韓国社会はよくならないし、個人の幸福も保証されない。不動産問題は解決しなければならない。しかし韓国は、1960年代の朴正熙政権以来「不動産共和国」と呼ぶにふさわしい道を歩んできた。すでに引き返せない所まで来たようにも思える。不動産関連産業が大きくなりすぎて、不動産関連産業に従事する関係者たちが多くなりすぎて、不動産の家計資産に占める割合が圧倒的なのだ。

不動産問題の弊害を啓蒙、宣伝したところで、不動産に人生のほとんどを賭けた人々に何の効果もないのは明らかだ。不動産に人生を抵当に入れてしまった人々の考えを変えさせる方法はただ一つ。不動産価格の上昇をあきらめさせ、よりよい不動産哲学と政策を支持させる代わりに、相応の給付を提供することだ。普遍的な福祉や基本所得のようなものがこれにあたるだろう。一種の社会的な大妥協またはメガディールだ。政治家ならこうした大胆な提案を社会に提起できなければならないと思うが、それはいったい誰だろうか?

韓国語