終わらない紛争、繰り返される女性への性暴力

南スーダンでは、昨年12月からディンカ族系政府軍とヌエル族系反政府勢力スーダン人民解放軍(SPLA)との武力衝突が頻発している。政府軍と反政府軍がともに戦争犯罪に該当する重大な人権侵害を繰り返し、すでに124万人近くが家を追われ、何万という命が奪われた。
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紛争を逃れてきた南スーダンの女性避難民(C)Pete Muller

「どうしてこんな惨いことをするの。同じ国の仲間でしょう。」

これは、南スーダンの少女が武装グループの兵士たちに泣きながら叫んだ言葉である。少女は、村が武装グループに襲われたとき、兵士7人に強かんされ、身ごもっていた子どもを流産したという。彼女はたったの17歳であった。

(アムネスティレポート「南スーダン:逃げ場のない市民たち」2014年5月より)

南スーダンでは、昨年12月からディンカ族系政府軍とヌエル族系反政府勢力スーダン人民解放軍(SPLA)との武力衝突が頻発している。政府軍と反政府軍がともに戦争犯罪に該当する重大な人権侵害を繰り返し、すでに124万人近くが家を追われ、何万という命が奪われた。

両軍の犯している戦争犯罪の一つが性暴力だ。南スーダンではいま、多くの女性たちが、ディンカ族、ヌエル族など特定の民族に属しているというだけで、性的虐待や組織的強かんの標的にされている。冒頭で紹介した少女もその一人だ。

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南スーダンでは、紛争を逃れる人びとの避難先の一つとなっている場所が教会である。その教会で、女性と少女たちが兵士たちに拉致されて、強かんされるという事件が起きている。写真は事件が起きた教会である。©Amnesty International

紛争では、とりわけ女性と少女が性暴力にさらされる。過去も現在も、性暴力は「攻撃の手段」や「見せしめ」として、あるいは兵士たちの「戦利品」や「慰みもの」として使われている。これは決して南スーダンだけの問題ではない。シリアやエジプト、中央アフリカ、コンゴ民主共和国、ソマリア、マリ、リビアなど世界各地の紛争下で起きている。

性暴力を根絶すべく、国際社会はさまざまな対策を講じてきた。1993年に国連は女性に対する暴力撤廃宣言を採択し、1995年の第4回国連世界女性会議では女性への暴力をなくすために各国が講じるべき施策を挙げ、安保理決議で幾度となく性暴力は処罰すべき卑劣な犯罪だと訴えてきた。

「性暴力を絶対に許さない」というこれら国際社会の合意にも関わらず、犯罪は各地で繰り返されている。性暴力は戦争につきもだからと、他の戦争犯罪と比べ軽視される傾向がある。また、性暴力の経験はもとより話しづらい上に、社会によっては逆に被害者たちが差別の対象となってしまうことがある。そのため、実際には加害者は処罰されず、沈黙を強いられる被害者たちには十分なサポートを与えられていない状況が続いている。さらに、人びとの無関心と無理解が性暴力を野放しにしている。

性暴力は紛争下であっても犯罪であり、国際社会は犯罪の捜査と加害者の訴追を徹底し、被害者たちが効果的な救済と回復へのサポートを得られるようにしなければならない。そして、市民社会は戦時下の性暴力という問題について知り、根絶するよう声をあげなければなりらない。性暴力は個人の尊厳を奪い、被害者とその家族、社会に長期間にわたって深い傷を残す。いかなる状況下でも許されてはならず、性暴力を根絶する責任は私たち一人一人にある。

政府軍とSPLAは、今年1月に停戦合意を調印し、5月に和平に向けた合意を結んでいる。国連も平和維持軍の増員を決定し、地域の平和と安全維持を担うアフリカ連合も4月に調査員を現地に派遣した。しかし、二つの勢力は人びとへの攻撃を続けている。南スーダンの紛争は終焉からほど遠く、女性や少女たちはいまも怯えながら生活を送っている。

〇シンポジウム開催「紛争と女性~戦時下の性暴力をなくすために~」

◆日時:6月14(土)14:00~17:00 

◆場所:青山学院大学青山キャンパス17号館5階17510教室

◆パネリスト:玉本英子さん、渡辺美奈さん、坂上香さん

◆主催:アムネスティ日本

◆詳細・お申込みは下記から

〇南スーダンへの署名アクションに参加してください!

「国を二分する戦闘で、狙われる市民を守れ!」

政府軍とSPLAの標的となっている南スーダンの人びとを守るため、あなたの力を貸してください。両軍に市民を狙った殺害、強かんやその他性的虐待、略奪、器物損壊をやめるよう訴えてください。