イタリアのレンツィ首相:この若き男は老害が支配する国をうまく率いることができるか?

イタリアは、崩壊の寸前に立っている。その主な原因は、老人により統治されているイタリアの政治的、経済的システムだ。
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2014年2月22日より就任したイタリアの新首相、マテオ・レンツィは、国会議員の経験があったわけではない。彼を首相の座に就かせたのは、政界の重鎮である88歳のジョルジョ・ナポリターノ大統領、そして有罪判決が確定した77歳の元首相シルヴィオ・ベルルスコーニの2人である。レンツィは39歳で、その大臣らの平均年齢は48歳。そのうち、2人の女性大臣は33歳だ。彼らは自分たちが政権を運営できると信じている。しかし、やがて彼らは自分達が政府しか掌握していないことに気づくかもしれない。老人の汗が染み付いた政権をコントロールするのは難しい。

1861年以降で最悪の不景気に突入するなか、タイムズ紙に「世界一の危険な経済」と評されたイタリアは、2014年2月14日に過去68年で実に63人目の首相となる、エンリコ・レッタが突然退任する出来事に直面した。 中道左派・中道右派の連合に頼るレンツィは、4年間で安定と社会的、経済的な変革を起こすと公約している。しかし、 有権者に選ばれた大部分の政治指導者らは変革を訴えるレンツィに反対し、新たな選挙を求めている。イタリアは、崩壊の寸前に立っている。その主な原因は、老人により統治されているイタリアの政治的、経済的システムだ。

イタリアでジェロントクラシー(老人政治)がはびこったのは数十年前に遡る。だが、OECD諸国でもこの傾向は一層強まり、1990年から2005年までの有権者の平均年齢の増加は、その前の30年の3倍となった。イタリアは、まさに、この分野、つまり、低賃金の派遣労働者、主に若者、女性が占める低所得階級が爆発的に増加している「先進国」である。

■ イタリアと老害

エリート階級が高齢化する他の国にとって、世界3位の高齢人口を持つイタリアの現状は注意深く目を向けるのに値する。ここ70年間、時代遅れの選挙制度は、老人が経済、政治、国会、社会そのものを牛耳る状況を生み出した。イタリア人で権力を持つ男性の平均年齢は59歳で(権力を持つ女性はほとんどいない)、ヨーロッパの中で最年長である。大学教授の平均年齢は63歳、牧師は67歳。2013年までの選挙では2500人の代議士のうち、30歳以下の者は2人だけ。 教育を受けている若者の多くがイタリアを去っていくわけだ。

イタリア人一人当たりの可処分所得が2007年以降低下しているが、これは1866年と1929年に起きた過去最悪の不景気の時より酷いものだ。課税による政府収入の多くが国内総生産の133%に達した国家債務に回されるが、その金額は増加している。10年以上にわたって、国内の生産性は低下しており、ここ6年間で 国内総生産は9%減少、かつ闇経済と脱税は国内総生産の20%を占めている。

貧困、格差社会、13%の失業率(1977年以降最高)が拡大する中、数万人の最も優秀な人材が、毎年、他国に移住し続けている。労働者を輸入するイタリアは技師、医師、科学者を輸出している。イタリア大学長連盟の学長、アントニオ・リプリエノ博士はイタリア国籍だが、住む国はスイス。イタリア人であるリノ・グッゼラ博士は、ヨーロッパ大陸で最高峰とランク付けられたスイス連邦工科大学の学長を努めている。でも、彼はチューリッヒにいる。

年金受給者の労働組合と政党は、高齢者人口を過剰に配慮するが、若者にはそのような支持がない。年寄りのイタリア人は、第二次世界大戦後の高度経済成長により富を成してきたが、その後生まれた者を見捨てている。もしかしたらイタリアは若者のためにマーシャル・プラン(第二次大戦後、G=C=マーシャルの提案に基づき、1948年から51年まで実施された、欧州経済の復興を目的とする援助計画)を必要としているかもしれない。

■ レンツィと430万人の成人は「若すぎる」

2月25日、レンツィは315人の上院議員の前で「Non ho l'età(私は若すぎる)」と言った。上院議員になるためには45歳以上でなくてはならないため、レンツィはあと6年待たなければならない。若いレンツィは、もしもアメリカで生まれた場合はアメリカ大統領にもなれる年齢だ。だが、イタリアの上院の暗黒街では許されない。レンジーの他に「私は若すぎる」と言わざるを得ないのは、430万人のイタリア人成人たちだ。完全な選挙権を得るのに25歳まで待たせる国はイタリア以外にない。イタリアの若者は18歳になると代議員選挙に投票することが可能となるが、上院議員選挙に投票するためには選挙権を持つ人口の8%を占める彼らは、さらに7年間待たなければならない。若年失業率が42%を超えるなか、イタリアの経済低下により最も悪影響を受けている若者が、彼らの将来を決定する議会の半数を選べないのは、極めて皮肉なことだ。

現在の経営者と政治家らは、とりわけ環境的、技術的、金融的事項に関して短期的に成果を最大化するために、意図的に今の政策の長期的影響には目を背ける。70年も続く老人たちの権力構造は、イタリアの復興、革新、経済競争力を削いでいる。世界経済フォーラム2014の全加盟国のうちイタリアは、49位にまで落ちている。結局実現されなかった「大いなる変革」を30年間も待ってきたイタリアは、完全な投票権の年齢を25歳から18歳へ、また上院議員参加の権利を45歳から25歳へと早急に下げるべきだ。これこそが、政治安定と社会正義を促し、時代遅れで利己的な老人による支配からイタリアを解放する。

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左:ハッピー・デイズのテレビ番組に出演する「フォンジー」という小生意気な人物。右:イタリア新首相、マテオ・レンツィ。

レンツィは、コメディアンでもある政治家ベッペ・グリッロによって、ホームコメディに登場する若く生意気なヒーロー「フォンジー」になぞらえて、「レンジー」というあだ名を付けられた。レンツィは、必死に若い有権者を集め、64歳のベッペ・グリッロが率いる「五つ星運動(M5S)」を模倣しようとしている。2013年、25歳以下の有権者のうち M5Sの支持者は約47%となったが、レンツイ派の支持者は、その6人のうち1人に過ぎない。老人が権力を掌握する現状に反対し、妨害行為をする若い有権者の影響力が高まるにつれて、レンツィは政権を失ってしまう可能性がある。

2014年3日19日Huffington Postより翻訳

翻訳:トレンチャーグレゴリー(Gregory Trencher)