FacebookのCEOマーク・ザッカーバーグは、インターネットに未だアクセスしていない世界中の50億人をネットに繋げることを目標に掲げた新たなプロジェクト「Internet.org」の立ち上げに際して、今年8月にこう言っていた。
「世界をつなげるというのは、我々の世代の最も素晴らしい挑戦の1つだ」
しかし、どうやらビル・ゲイツはこの考えに賛同していないどころか、その考え方にかなり懐疑的なようだ。彼は、フィナンシャル・タイムズのインタビューの中で、 ザッカーバーグの考えについて苛立ちを示しながら、「マラリア撲滅ワクチン」と「世界をつなげること」との優先順位を考えるべきだという指摘をした。
ゲイツは、「"世界をつなげること"とマラリア撲滅ワクチンのどちらがより重要だと思う?もしあなたが、"世界をつなげること"だと考えるならば、それは素晴らしいことだよ。私はそうは思わないが」とも述べている。彼がマイクロソフトの創業者でありながら、こうした考えを示すのはInternet Explorer6が星になるからではない。「もちろんITを愛している」と述べるゲイツは、もし本当に人々の生活を向上させたいならば、子どもの生存や栄養といった基本的な物事に対処するべきだと考えているのだ。
■ 当初はアメリカの子どもにインターネットを
彼が、こうした立場を示すのは初めてのことではない。ゲイツと妻メリンダによって2000年創設されたビル&メリンダ・ゲイツ財団は、マラリアやポリオの根絶のために多額の研究開発を費やしてきている世界最大規模の団体だ。ゲイツは、様々な場所で述べているように、貧困国における健康や教育、農業などの問題にこそ資金を投じるべきだと考えているが、この財団も当初からこうした考えを持っていたわけではない。
彼は、当初自らの生み出した莫大な資産を通じて、アメリカやカナダの貧しい子供たちにコンピュータやインターネット環境を提供するような活動を続けていたのだ。しかし、近年ではそうした考えとは距離を置き、よりサハラ以南アフリカなど最貧国で生じている様々な問題へ直接的なアプローチを行おうとしているのだ。
もちろん、ゲイツ(とその財団)のやり方には多くの批判もある。そもそも世界の貧困を撲滅し、健康や教育などを向上させる明確な方法は、国連がエキスパートを集めて何年も掛けた挑戦を行っているが、一朝一夕で見つかるものではない。おそらく、ゲイツ自身も模索を続けてるのだろう。しかし、はっきりしていることは、世界中にインターネットを広めるために気球を打ち上げるGoogleのプロジェクトや、宇宙へ行くためにロケットをつくるようなイーロン・マスクらのプロジェクトに、ゲイツはそれほど興味を持っていないということだ。
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(※この記事は11月4日に掲載された「ザッカーバーグ「ネットは世界を救う!」ビル・ゲイツ「お・・・おう」」より転載しました)