「街の健康ステーション」としての新たな薬局像

これからしばらく、「薬局のあり方」についての議論は否が応にも盛り上がるであろうが、地域薬局には「街の健康ステーション」としての大いなるポテンシャルがあるということに目を向け、新たな薬局像の普及・定着へと進んで行ってほしい。
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以前の記事(忍び寄るサイレント・キラー「糖尿病」とどう向き合うか?)で、増え続ける糖尿病への対策として血液検査が重要であること、検査実施率のさらなる向上のために微量血液検査技術をもっと活用すべきことを説いた。また、その具体例として、我々が東京都足立区と徳島県とで行っている医薬連携の社会実験プロジェクト「糖尿病診断アクセス革命」 を紹介した。

しかしながら、このようなプロジェクトを展開してきた中で、最大のネックとなってきたのは実は管轄の保健所による規制である。薬局でのこのような活動を保健所が認めるかどうかは地域によって対応がまちまちであったが、認められない場合の理由としては、「臨床検査技師等に関する法律」に定める「衛生検査所」の届出が必要、というものであった。「衛生検査所」とは、採取された血液等の検体を医療機関から集めて検査する施設のことであり、検体検査センターとも呼ばれるが、開設には臨床検査技師の国家資格が必要だ。そこでは多種多様な検体検査を精度管理なども含めて臨床検査技師が担当する。

しかし、指先を自分で穿刺して得られた微量の血液から専用の装置で検査を行う際に、本当に「衛生検査所」の届出や、臨床検査技師の立ち会いは必要だろうか? 規制を振りかざす一部地域の保健所との議論の中でも、臨床検査技師の必要性という論点は出てきた例はない。微量血液検査装置の精度保証はメーカーが行っており、誰でも同じように取り扱えるようになっているし、実際、装置の取り扱いそのものには国家資格は不要である。

もちろん、薬局で得られた検査結果に対して、薬剤師の判断で意味付けしたり療養指導を行ったりすることは医療行為に相当してしまうおそれがあり、医師法や医療法の観点からも、また実際、医学的に正しい医療から外れないためにも、医師の包括的な管理下にあらかじめ設定した基準値に基いて受診勧奨を行うに留める必要がある。だが、このような枠内であれば、衛生検査所の届出なしに薬局が検査の場を提供することは問題ないと筆者は考える。

このような中、6月5日に公開になった規制改革会議の資料「規制改革ホットラインの処理状況」の中で、糖尿病診断アクセス革命事務局から提案していた「薬局での指先自己穿刺検査に関する規制緩和」に対し、

簡易診断を受けられる環境整備については、現在、産業競争力会議で議論されており、その結果を踏まえ、平成25年度中に検討を行います。

との回答が厚生労働省から寄せられた。

実は、3月29日に行われた第5回産業競争力会議の資料7「健康長寿社会の実現(佐藤康博主査(みずほフィナンシャルグループ社長))」 の中にも、

(4)健診による予防・早期発見のインセンティブ

○ 適切に選択された健診や検診による問題の早期発見と、それを踏まえたアクションを取ることが肝要である。(中略) 同時に、より利便性担保のため、血液や尿の簡易診断を身近に使える環境整備も行うことが必要である。

という提言が載っており、この点に関して産業競争力会議・規制改革会議と厚生労働省との間でこれから検討が行われる見通しとなった。前向きな結論が得られることを切望する。

おりしも規制改革会議からは、「医薬品ネット販売解禁」の答申が同日、出された。これからしばらく、「薬局のあり方」についての議論は否が応にも盛り上がるであろうが、地域薬局には「街の健康ステーション」としての大いなるポテンシャルがあるということに目を向け、新たな薬局像の普及・定着へと進んで行ってほしい。