来年度予算の概算要求の基準が出された。
社会保障費は1兆円の自然増になる。
高齢化だから仕方ないのだろうか。
いやいや、決してそうではない。
例えば、医療費。70歳から74歳の高齢者の窓口負担は、法律では2割負担と決められている。しかし、毎年約2000億円(2012年度は1898億円)の国家予算を投じて、1割負担に軽減している。
現在検討されている案は、すでに今、1割負担に軽減されている方々は1割負担で据え置き、新たに70歳になる人から2割負担にするというもの。
現在69歳の人は3割負担なので、70歳で2割負担になっても今よりは自己負担は減少することになる。つまり、70歳から74歳の自己負担を2割に増やしても、一人一人でみれば負担が増える人はいない。
無駄撲滅PTの立場から言っても、これはやっていただかなければ困る。
(もっともこの案では世代間格差が固定されるだけではないかという意見もある。たしかにそうだが、少なくともこの案までは確実に実行する必要がある。)
さらにジェネリック医薬品のこともある。
例えば高脂血症の薬のメバロチンの薬価は5mg1錠で54円。ジェネリックで一番薬価が低いプラバピークは14.90円、72%減。
消化性潰瘍用剤のガスターの20mgの薬価は49.30円。一番安いジェネリックであるガスイサンの薬価9.60円、81%減。
長期的に飲み続けなければならないような薬の場合、患者の個人負担にも影響が大きい。
しかし、我が国のジェネリック医薬品の使用割合は、諸外国と比べて非常に低い。
2010年、数量ベースでみると
日本 40%
米国 90
英国 70
独国 80
仏国 60
厚労省は、平成30年3月末までにこの割合を60%以上にしようと目標を掲げている。
もしこれが達成できれば、国の予算で1400億円の削減になる。保険料と窓口負担も合わせた医療費総額でみれば5300億円にもなる。
もし、ジェネリックがあるすべての薬をジェネリックに置き換えたら、国の予算ベースで4000億円の削減、医療費総額で1兆5300億円の削減になる。
自民党の無駄撲滅PTの医療チームが参議院選挙中を利用して、健保や国保にお願いしたアンケートが続々と返ってきている。
それをみると、多くの保険者は、医療費を削減するための対策を何もとっていない。
他方、いくつかの保険者はきちんとデータを取り、様々な対策をうって医療費削減を実現している。
保険者に、疾病ごとの医療費を尋ねてみると、きちんと分析しているところは疾病を細かく分類してデータを取っている。
大雑把な分類でしかデータをとっていない保険者は、たぶん何もしていない。
「その他消化器系の疾病」という項目の医療費が多いなどというデータをとってみても、対策など出てこない。
どんな疾病で医療費がかかっているのかをまず、把握するところから医療費削減のための対策が始まるはずだが、ほとんどの保険者にそれができていない。
ということは、医療費は、削減の宝庫である。
医療費は、結局、税金、保険料、窓口負担のどれかでカバーしなければならない。
2013年度の国民医療費41兆円は、窓口負担5兆円、保険料負担20兆円、税金(国と地方合計)16兆円で負担している。
こうしたことをしっかりと予算の策定の中で議論して、国民負担を減らしていくために何が必要かという議論に負担の主体である国民を巻き込んでいかなければならない。
(※この記事は、2013年8月9日の「 河野太郎公式ブログ ごまめの歯ぎしり」より転載しました)