「めちゃくちゃ面白いテレビ番組があるから、ぜひ見てくれ!」と、友人から興奮気味のメールがきた。
詳しく話をきくと、その番組は「CNNヒーローズ」というらしい。毎年12月に放映される特別番組で、世界中にいるCNNの視聴者から、「日常の中にいるヒーロー」にスポットライトをあて、紹介するのだとか。2007年に始まったこの番組は、これまでに100を超える国から4万人近い応募があったという。
友人は、「いやー、やられたって感じだよな!(><)」と、えらく興奮していたので、勧められるままに見てみると、確かに面白かった!
特に私の胸を打ったのが、2008年のヒーローに選ばれた、キャロライン・ラクロイさんの「刑務所からのビデオメッセージ」という話である。
アメリカには現在、親と一緒に暮らすことができない子どもが、150万人もいるという。なぜなら、親たちは「刑務所」に入っているからだ。
2児の母親でもあるキャロラインさんも、その一人であった。1994年、大麻所持のため逮捕されたのだが、刑務所での生活は、その後の人生を一変させることになった。
「刑務所にいたとき、私の息子たちは頻繁に私をたずね、勇気づけてくれたわ。でも監獄に戻ると、子どもの訪問を一度も受けたことがない母親たちが、数多くいたのです。彼女たちは、鬱々とし、とても不幸にみえました」
実際、刑務所にいる母親の多くは、子どもの訪問を受けることはないようだ。米国司法省の報告によると、子どもがいる服役者の5人に一人しか、毎月の訪問を受けていないという。刑務所は、時に車で3時間~4時間もかかる所にあるため、子どもにとっては物理的に来ることがむずかしいのだ。
「親が子どもと会えず、とても悲しい想いをしていました。きっと、子どもたちも同じような想いをしているはずって考えたんです」
その悲惨な現実を目にしたキャロラインさんは、1996年に出所した後、服役中の親が遠く離れた子どもにビデオメッセージを送るプロジェクトをはじめた。その名も「Message Project」。これまでに、3000以上ものビデオメッセージを送ってきた。
「私がメッセージプロジェクトを始めたのは、2人の子どものお陰です。私が服役中、彼らは私を愛していることを、たゆまず教えてくれました。すべての子どもと服役中の親は、自分が愛されていることを、知る必要があります」
刑務所からのビデオメッセージは、ほころびかけた家族のきずなを取り戻すきっかけになっているようだ。
「ある服役中の父親は、子どもにバスケットでどうやったらうまくシュートを打てるのか、教えていました。また別の母親は、子どもがベッドに入った時に読み聞かせるための絵本を読んでいました。子どもたちは、そのビデオを何度も何度も、繰り返し見るのです」
キャロラインさんによると、多くの親は、ビデオメッセージの中で初めて、子どもに謝罪をするという。番組でも紹介されていたが、親が謝罪する姿を、食い入るように見つめる子どもの姿は、とても胸を打つものであった。
今年で7年目を迎える、CNNヒーローズ。
残念ながらまだ、日本から選ばれた人はいない。みなさんの身近に「ヒーロー」がいれば、ぜひ応募してみてはいかがだろうか?! ちなみに、今年の応募期限は8月31日とのことである。