東京五輪開催を日中韓の関係正常化につなげたいところ

日本は先進国にふさわしくもっとオープンな国になっていくことが、日本の新しい成長にもつながってきます。日中韓の関係正常化も焦ることは必要がなく、東京五輪で、成熟した都市、そこでの心のこもったおもてなしや、民度の高さ、ただ経済規模拡大を追い求めることから卒業した日本の姿を中国や韓国の人々に体感してもらうことで、また違った関係が生まれてくるのではないでしょうか。日本は将来に向かってやるべきことをやればいい、ただそれだけのことだと思います。
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あいかわらず東京五輪決定をめぐって、日中韓のネットの一部では互いの悪口を言い合っているようですが、リニューアルされる国立競技場で、互いに思う存分殴りあって決着をつける記念イベントでもやったらどうなんでしょう。映画パッチギのように。

日本では匿名だから言いたい放題なのでしょうが、寄付とか、人命救助とか、尊敬される行動を行ったときにこそ匿名の奥ゆかしさがでてくるものです。

それは冗談として、中国や韓国で東京五輪をボイコットという動きは安倍総理が靖国参拝でもしないかぎりはない話です。それは東京五輪開催が振り上げた拳を収めるいいきっかけにできる、あるいはしたいとおそらく中国も韓国の政府も考えているのではないでしょうか。

なぜなら互いの国益にならないからです。反日暴動が中国の国際的な信頼を損ね、また中国経済にとってもマイナスになったことはこれまでも指摘してきたことです。貿易依存率の高い韓国は、宿命的に世界からの信頼を得ることが絶対条件でしょうが、異常な行動を収めない限り、やがて世界からの信頼を失うリスクを背負います。しかも浮き沈みの激しいエレクトロニクスを生業としているサムスンへの経済依存度が高く、サムスンが今後とも順風満帆にやっていけるという保証はありません。日本市場は韓国にとっての保険となってきます。

さっそくですが、2020東京五輪開催決定を受け、韓国文化体育観光部の劉震竜(ユ・ジンリョン)長官が8日午前に下村博文文部科学相に祝電を送ったことを聯合ニュースが伝えています。

また、中国からは祝電はなかったものの、中国人民網日本語版が、東京五輪開催決定で、安倍内閣の支持率が上がり、それによって日本の極右勢力がさらに台頭することを恐れる記事を掲載する一方で、東京五輪成功を期待する環球時報の社説を載せています。

G20でようやく安倍総理と習近平主席が、会議開始前に首脳待機室で会い短い話を交わせたことも日中関係改善につながればと祈りたいものです。

中国や韓国が恐れる日本の右傾化も、おそらく東京五輪開催に向けて違った流れになってくるものと思います。日本の右傾化がほんとうに起こっているのかも疑問ですが、ただ一部に、停滞し、閉塞した状況の中で自信を失い誇りを失った人々が、なにかに縋りたいという気持ちからナショナリズムに走り、また煽ったということがありますが、TPP参加に加え、東京五輪開催で、もはやそんな内向きな発想で、世界の信頼を損ね、また摩擦の原因になるようなことを行う暇は日本にはないはずだからです。

日本は先進国にふさわしくもっとオープンな国になっていくことが、日本の新しい成長にもつながってきます。日中韓の関係正常化も焦ることは必要がなく、東京五輪で、成熟した都市、そこでの心のこもったおもてなしや、民度の高さ、ただ経済規模拡大を追い求めることから卒業した日本の姿を中国や韓国の人々に体感してもらうことで、また違った関係が生まれてくるのではないでしょうか。日本は将来に向かってやるべきことをやればいい、ただそれだけのことだと思います。

(※この記事は9月10日の「大西 宏のマーケティング・エッセンス」より転載しました)