TPP、地方議会の現場から

選挙では農業票を意識する候補が少なくないだけに、ある程度のヤジは覚悟したとは言え、モノを言わせぬような雰囲気になるとまでは思っておらず、TPPを語ることすらタブーとさえ感じたのである。
|

7月の交渉会合への参加により、TPPに関して推進派の筆者としては、ようやく一歩前進したという印象だ。しかし、このまますんなり進むかどうか不安も残る。

一般的に、反対派の急先鋒と言えるのは農業関係者だろう。国政では、選挙で農業票をバックに戦った議員がTPP亡国論を唱えているのを聞くものの、それは地方議会においても同じ。私が議席をお預かりする千葉県は、全国で第4位の生産額を誇る農業県であり、筆者が県議会の議場においてTPP推進を趣旨とする討論を行った際は、当然のことながら反発を受けた。

そこでは、左右いずれのイデオロギーもまったく関係ない。討論した時間は10分足らずだったが、そのわずかの間「何言っているかわからないぞ!」「日本をダメにするつもりか!」「いいかげんにしろ!」──と議場は騒然。筆者に続き登壇した女性議員には「今の討論でムカムカしました」とまで言われてしまった。

選挙では農業票を意識する候補が少なくないだけに、ある程度のヤジは覚悟したとは言え、モノを言わせぬような雰囲気になるとまでは思っておらず、TPPを語ることすらタブーとさえ感じたのである。

ちなみに、千葉県は農業生産全国第4位ながら、統計上の農業人口は県内人口約620万人のうち、わずか3%台に過ぎない。討論を行ったのは一昨年の9月で、当時の世論調査では国民の半数以上がTPPに賛成していたが、定数95の議会において「環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加に反対する意見書」は賛成72、反対22(議長は投票せず)の圧倒的多数で採択された。この意見書、単にTPPに対して反対というのではなく、TPPの"交渉参加"に反対であったことを付け加えておきたい。

もっとも、森田知事が再選された知事選直後の今年4月の臨時議会においては、TPPに反対する意見書が上程されながら、「緊急性無し」との判断で議会は採決を見送るなど、現政権がTPP参加に意欲を示していることもあってか、私が痛烈なヤジを浴びた1年半前とは様相が異なっている。

それでも、先行き紆余曲折しそうと思うのは、議場で物凄いパワーを感じた経験があるためだ。このまま、反対派が黙っていると思えない。最初の交渉に臨むとしても、その後については、まだ注意深く見守る必要があるだろう。