政治家もブランドコンテンツの時代

ブランドコンテンツとは何でしょうか?最近注目を集める企業の新たな宣伝・広報手法について、東洋経済オンラインがそう呼称しています。まだ業界的に統一された言葉ではないのですが、ネットにおいては企業が、新聞や雑誌の編集記事のような読みごたえのあるコンテンツをプロデュースし、自社サイトで発信、あるいは東洋経済オンラインのような報道サイトに広告として出稿しています。
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こんにちは。新田哲史です。僕もセルフブランディング好きです。この投稿もその一環です。あ、ハフポストでは、初めましてですね。本職は広報コンサルで、昔は新聞記者というガテン系の仕事をやってました。

■ ブランドコンテンツって何?

さてブランドコンテンツとは何でしょうか?最近注目を集める企業の新たな宣伝・広報手法について、東洋経済オンラインがそう呼称しています。まだ業界的に統一された言葉ではないのですが、ネットにおいては企業が、新聞や雑誌の編集記事のような読みごたえのあるコンテンツをプロデュースし、自社サイトで発信、あるいは東洋経済オンラインのような報道サイトに広告として出稿しています。

東洋経済オンラインでは先日、堀江貴文さん、夏野剛さんの対談でメディア業界の今後を占う記事が話題になっていましたが、これはユーザベースというIT企業がスポンサーになっています。しかし記事を読めば、まるで編集部の一般記事と見まがうような内容です。従来の記事広告と違うのは、企業が自社を主語にした情報発信にせず、商品等のプロモーションをダイレクトに行わないのが特徴です。企業の経営哲学や社会観をベースにしながらも読み手にとって"お得感"のある報道やエンターテイメントのコンテンツを提供します。企業側としては、読者の耳目を集めて、自社の認知度やブランドを向上させるのが狙いであり、発信拠点としてページを提供するメディアとしては新たな広告収入につながると期待を寄せています。

■ ネット選挙で政治にも波及?

私は先の参院選で、東京選挙区から3選を目指した鈴木寛氏の広報スタッフを務めました。その経験から、ブランドコンテンツの潮流が政治の世界にどう波及するか注目しています。というのもメディアが発達した国では、企業マーケティングの手法は選挙で応用されてきたからです。ネット選挙が解禁された日本では今後、政治家のブランディング戦略が一層重視されるとみています。企業がブランドコンテンツにより、自社視点ではなく、第三者視点あるいは読者である有権者視点の情報を発信するように、政党や政治家、候補者も同じような広報宣伝手法で、政治に関心が薄かった若者等にも訴求することは十分可能性があるでしょう。

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とはいえ、政治家や候補者の事務所には編集ノウハウに長けたスタッフがいないケースの方が一般的です。企業でもネタづくりは悩むものですが、先の「堀江・夏野」対談のように著名人などをゲストに招いた対談やインタビューならば読まれる企画として作りやすいと思います。私が携わった事例でいえば、新宿の街頭にトレーラーハウスのネット選挙スタジオを設置し、鈴木氏が毎回ゲストを招いてニコニコ生放送で配信する取り組みを行いました。当時所属していた民主党は大逆風でしたので、無党派の幅広い方に訴求したい思いもあり、ゲストはNPO関係者や企業経営者、アスリート、芸能人等、政治家でない方々を中心にお招きしました。他党でも、政治家ブロガーとしての人気の音喜多駿・都議(みんなの党、北区)が最近、オピニオンとの対談企画を始めました。第1回のゲストはディスカヴァー・トゥエンティワンの干場弓子さん。出版業界で型破りな経営者としてお馴染みです。みんなの党の支持者は都市部の無党派層が主体ですので、起業や女性の「働く」に関心のあるキャスティングであることがうかがえます。

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■ エグザイル降板事件が問う課題

しかし課題もあります。その一つが既存メディア、特にテレビ局の反応です。参院選の際、エグザイルのメンバーが自民党候補を応援する写真が候補者のブログに掲載されたことで、NHKが出演番組の放送を延期したことが話題になりました。私たちも複数のゲストが放送局に出演見合わせの措置を取られました。しかも選挙期間前に応援ではなく政策論議をしただけであり、判断が曖昧なことに怒りを覚えたものです。これではネット選挙が解禁されたとしても、外部の有識者は、候補者との個別対談に及び腰になったり、メディアでの活動を制限されたりしかねません。当時、私たちは「既存メディアによるネット選挙潰しではないのか」と勘繰りたくもなりました。

その背景の一つは、先日のハフポストの記事「ネット選挙の裏テーマは『通信・放送融合選挙』」でも掲載されたように、放送法が要求する「公平・中立」の原則を、テレビ局が過剰なまでに意識していることがありそうです。ネット選挙に関連して時代に合わせて見直すべきは公選法だけではありませんでした。

2月の都知事選では、ネット選挙活動が一段と進化することが期待される反面、選挙期間中の政策論議を活発化させるために、既存メディアのネット選挙への向き合い方も論議されるべきだと考えています。