「脱原発」は「国民窮乏化政策」であるという事実

ハフポストが伝えるところでは、東電 「原発再稼働が遅れたら電気料金を最大10%値上げ」との事である。「脱原発」に伴い必然となる電気料金の値上げという負の連鎖を読者に対し今回の様に冷徹に伝える事は極めて重要と思う。また、下記の様に意見を求める事で読者に考える機会を提供する姿勢も高く評価したい。
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ハフポストが伝えるところでは、東電 「原発再稼働が遅れたら電気料金を最大10%値上げ」との事である。「脱原発」に伴い必然となる電気料金の値上げという負の連鎖を読者に対し今回の様に冷徹に伝える事は極めて重要と思う。また、下記の様に意見を求める事で読者に考える機会を提供する姿勢も高く評価したい。

※東電が、原発再稼働が遅れた場合、電気料金の値上げする可能性があると言及しています。この再建計画について、どう思いますか? あなたの声をお聞かせください。

私は過去、下記の記事で「脱原発」を否定した上で、早期の「原発再稼働」を提案している。その根底にあるのは「脱原発」は「国民窮乏化政策」であるという、私の認識である。日本人は自ら進んで貧乏になる必要もなければ、なるべきではないと私は考えている。

■原発を停止して電力料金の10%値上げで済むのか?

原発停止に伴う本来は必要とされない化石燃料の追加輸入費用が年間4兆円と聞いている。この金額は本来利用者によって負担されるべきものであるから、企業と個人の様な議論を一旦無視すれば、国民一人当り4万円の負担が必要という話になる。4人家族であれば、@4万円×4人=16万円の負担となる。従って、今回の10%の値上げで収まると思うのは余りに楽観的であろう。

■「原発」から「再生可能エネルギー」に転換した場合の国民負担は?

私は終始一貫否定しているが、「脱原発」支持者の大好きな言葉は世田谷新区長が選挙で主張した、「原発から再生可能エネルギーへ」という、決して実態を伴う事のない空虚なスローガンであろう。問題はこれが果たして可能なのか? という基本的な疑問と、その場合のコストインパクト(国民負担金額)という事になる。ドイツを代表する一流雑誌のDer Spiegelも再生可能エネルギーの高コスト体質を厳しく批判しているが、ドイツの前例から日本での国民負担金額を推定する事は可能なはずである。途方もなく重い負担になると推測されるが、今回東京都知事選に出馬し、「原発」から「再生可能エネルギー」を主張するのであれば、矢張りその場合の国民負担の金額を提示すべきである。

■電力料金が上がれば国内製造業の海外逃避は加速する

安倍首相は「見せ方」が大変上手なので国民は日本経済が回復基調にあると錯覚しているかも知れない。しかしながら、私はアベノミクスによる後遺症の顕在化なども含め危ういものを感じている。今回の一応の経済活況とは、円安・株高から個人が資産利益を得、個人の高額商品消費増となっている事や、一方、震災復興のための公共投資が地方経済を活性化し、この二つの複合から国民は経済が回復していると錯覚しているといった現象に過ぎないのではないのか?

しかしながら、11月経常収支、5928億円の赤字 過去最大が示す様に円安による輸出回復から企業業績が改善し、その結果設備投資と雇用が拡大し、賃金上昇から個人消費の拡大といった、安倍政権が目指したと思われる従来型の景気回復パターンは見事に空振りに終わっている。こういう状況、経緯であれば、一旦電力料金の値上げの様な逆風が吹けば、元々海外移転を考えていた製造業は我先に出て行くのではないのか? 工場がなくなれば当然従業員も不要となるので、深刻な雇用問題が発生するはずである。

■電力料金の上昇は賃下げで吸収する?

全ての製造業が海外に出て行けるとは思わない。一方、海外メーカーとの競合から電力料金の上昇を製品価格の上昇で吸収出来ない企業が大半であろう。従って、多くの企業は歯を食いしばって電力料金の値上げに耐える事になる。具体的には、正社員をリストラし非正規雇用で補完するとか、或いは、サービス残業の強要も含め正社員人件費の削減に舵を切るという事である。労働基準法に抵触するといった批判もあろうが、社会保障を負担する企業の雇用維持があって初めて日本の社会システムは機能する。従って、日本の労働行政は企業寄りであり、企業従業員は泣き寝入りするしかないのが現実だと思う。

■原発停止で貧しくなる日本

2013年11月の貿易赤字は11月としては過去最大で、相変わらず燃料輸入の増加で輸入が増える一方で円安に関わらず輸出数量の伸びが限定的で、全体として赤字の拡大が一向に止まらない。

財務省が18日発表した11月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1兆2929億円の赤字だった。赤字額は11月としては2012年(9570億円の赤字)を上回り、比較できる1979年以降で最大。単月としても過去3番目の大きさで、赤字額は初めて2カ月連続で1兆円を上回った。赤字は17カ月連続で9月以降、最長を更新し続けている。為替相場の円安進行を背景に原粗油などの燃料の輸入額が膨らんだ。航空機の輸入額も増えた。

13年1~11月の貿易赤字額は累計で10兆1672億円となる。今年は9月までの赤字額累計が7兆7816億円とすでに12年年間の6兆9410億円を上回っていたが、その後さらに赤字が膨らんだ。13年は年間で過去最大の貿易赤字になることがほぼ確実な情勢になった。

11月の輸入額は前年同月比21.1%増の7兆1933億円で、13カ月連続で増えた。アラブ首長国連邦(UAE)からの原粗油やマレーシアからの液化天然ガス(LNG)、米国からの大型航空機の輸入が増えた。

一方11月の所得収支は9,002億円の黒字に留まり、貿易収支・サービス収支・移転収支の赤字をカバー出来ず、結果11月月次で海外との総合的な取引状況を反映する経常収支が5,928億円の赤字に転落してしまった訳である。そして、この11月月次経常収支赤字は決して一過性の話では無く、今後確実に定着する。この事は、「日本が経常赤字国に転落する事を意味する。経常赤字に転落すれば、当然、日本から富が流出し、日本は徐々に貧乏になって行く。

東京証券取引所取り纏めによると、2013年12月第3週の海外投資家の売買高は8803億円の買い越しで、買い越しは8週連続で、買い越した金額はこれまでの過去最高を上回る約14兆円超を記録したとの事である。しかしながら、これはアベノミクスに便乗した結果のバブルであり、潮目は一瞬にして変わる。

投資家が、果たしてこれから貧しくなっていく日本への投資を継続してくれるのだろうか? それを期待するのは余りに楽観的であろう。一方で日本企業の内部留保は総額で約230兆円と言われているが、この資本逃避が加速するのも確実な状況である。従って、長期資本収支の赤字も拡大し、企業のみならず資金も日本から流出して行く事になる。日本が抜け殻になるという事である。

「脱原発」を主張する人は基本的に知的怠惰であり、こういう未来が予測出来ないのであろう。