第六回採用面接で聞かれた質問が秀逸だった

採用活動をしていると、たまに面白い事を言う応募者に合うことができる。といっても、面接でこちらから聞きたいことに関しては、面接官によって差異が出るとあまり良くないという理由から、統一しているので、そこで「かなり面白い返答」というのはあまり聞くことはできない。
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採用活動をしていると、たまに面白い事を言う応募者に会うことができる。といっても、面接でこちらから聞きたいことに関しては、面接官によって差異が出るとあまり良くないという理由から、統一しているので、そこで「かなり面白い返答」というのはあまり聞くことはできない。

言うなれば、こちらから聞く質問というのは単なる足切りのために使っている質問であり、それほど重要ではないのである。

その代わり本当に重要なのは、「応募者から出てくる質問」である。失礼とは思うが、応募者から出てくる質問のレベルによって、「この人がどの程度の能力なのか」ということは結構把握できるように思う。

例えば、よくある質問は「残業時間はどの程度ですか」であるとか、「平均年齢はどの程度なのですか」という質問である。

この質問はあまりうまくない。聞きたくなる気持ちもわかるし、もちろん正確に答えるが、残業時間や平均年齢の情報は私達が聞かれてもあまり面白くはない質問である。端的に言えば、「それを聞いてどうすんの?」という感じだ。

質問の意図は「労働時間が長すぎるのはイヤだ」であるとか、「平均年齢が若すぎたり、高齢過ぎたりするのはイヤだ」というものだろうが、そんなものは会社の状況によって変わるので、将来にわたってそういった状況が続くことを保証するものではない。

こちらとしては、「ああ、保守的な学生なんだな」と思うだけである。

さらに、「社内の雰囲気はどうですか?」という質問や、「どのような企業文化なのか教えてください」といった、答えにくい質問もイマイチだ。

もちろん聞くのは自由だ。

しかし雰囲気をどのように説明すればいいのか困るし、なによりも「雰囲気」というのは具体的なものではないので、相当ボヤッとした曖昧な回答が返ってくる。

「話しやすいですよ」

「気さくですよ」

「フランクですよ」

そういった回答だ。

そんな情報を仕入れてどうしようというのか。

とってつけた質問であることがバレバレである。

面接官の感じた「社内の雰囲気」はどこまで彼らの役に立つのだろうか。おそらく役にはたたないし、正確な情報が入手できるとは限らない。

また、ちょっと考えている風な応募者だと、「御社の会社の強みを教えて下さい」といった、どこかで聞きかじったような質問をしてくる人もいる。

そういう時は逆に「あなたはどう考えていますか?」「ホームページをみてどう思いました?」と聞きたくなる。私の偏見なのだが、大体においてこの質問をする方は、企業研究不足であるから、的はずれなことしか言わない。

本当に研究してきている人は、質問を「私は◯◯が御社の強みだと思いますし、ホームページにもそう書いてあります。しかし、現在の状況から見ると競合に対してこれは強みとは言えない気もしますが、どう考えているのでしょう」といった自分の意見も交えて質問をしてくるだろう。

これならば「鋭い学生だな」と思うし、こちらも真剣に考えなくてはいけない。それはそれでいい。

しかし最近最も「なかなかよい質問」と思った質問は、次の質問だった。

私 「では、こちらからお聞きしたいことは以上ですが、なにかご質問はありますか?」

応募者 「はい。差し支えなければ若干立ち入ったことをお聞きしたいのですが。」

私 「どうぞ」

応募者 「面接官の皆さんは、入社してどのくらいですか」

面接官Aさん 「12年です」

面接官Bさん 「8年です」

応募者 「ありがとうございます。Aさんは勤続12年ということですが、この仕事をなぜ12年も続けてこれたのですか?」

なるほど、と思った。これはいい質問だ。

これで上司になるかもしれない社員のレベルもわかるし、何に価値観をおいているかもわかる。いわば面接中に社員訪問をしているのと同じ効果が得られるということだ。

特に面接官に選定されている人は会社内において信頼されている人が多い。

「会社を値踏みする」には最適な人物である。

Aさんは聞かれたことについて、結構考え込んでいた。「確かになぜ12年もこの会社にいるのか・・・良い質問ですね」

しばらく考えて、Aさんはこう言った。

「私は、社長が好きだからです」

応募者の方は、それに対して

「なるほど、どんなところが好きなのですか?」とまた質問をする。しばらくAさんと受け答えして、Bさんにもおなじ質問をしていた。

Bさんは困っていたが、

「私にはこれしかできないですから」

と回答していた。

正直に言えば、私は「おいおい、それでいいのか?」と心のなかでツッコミを入れた。学生はあまり納得していないようだった。

つまりこの学生は「自分が入ろうとしている会社の、現場の声を集めた」ということだ。うちの社員より鋭い。

結果的にこの応募者は採用だったが、他の会社に内定をもらったということで、うちには来てくれなかった。

やっぱり、「採用できるのは、自分たちと同じレベルの人たちだけ」なんだな。

(2014年1月27日 Books&Apps に加筆・修正)