田中将大、通訳を公募の方針。迫る重要な決断

マー君の"パートナー"は誰になるのだろうか。ヤンキース入団が決まった田中将大投手(25)にとって、いかに少ないストレスでルーキーイヤーを過ごせるかは、結果を残すために大きな要素となる。鍵を握るのは、通訳の存在だ。
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■田中将大は、公募で通訳を決める方針

 マー君の"パートナー"は誰になるのだろうか。ヤンキース入団が決まった田中将大投手(25)にとって、いかに少ないストレスでルーキーイヤーを過ごせるかは、結果を残すために大きな要素となる。鍵を握るのは、通訳の存在だ。

 一部報道では、ヤンキースは松井秀喜氏の時と同じように、公募で田中の通訳を決める方針だとされている。本人や、サポート役として帯同する元楽天広報の佐藤芳記氏が、書類選考を通った人物と面談を行い、決めるというものだ。

 右腕にとっては、通訳の選定が最初の大仕事となる。どんな人物を選ぶかによって、活躍が左右されると言っても過言ではないからだ。

 メジャーリーグでプレーする日本人選手にとって、通訳の存在は極めて大きい。米国人記者への取材対応や、チームメート、スタッフとのコミュニケーションを助けることはもちろん、私生活をサポートすることにもなるからだ。

 1月23日に仙台で会見を開き、ヤンキースとの入団合意を発表した田中は、米国のファンへ英語でのメッセージを求められ「英語しゃべれないです。すみません」と苦笑いで対応している。英語を話せないルーキーは、日々の食事や買い物でもストレスを感じることになるだろう。それだけに、通訳の助けは必要不可欠だ。

■名コンビとなった松井秀喜氏とロヘリオ・カーロン氏

 ほとんどの日本人メジャーリーガーは、私生活でも英語を話せる通訳と時間を共にする。どこにいっても、言葉の壁で困ることはないからだ。特に、遠征先には家族が帯同しないため、食事には2人で出かける機会が非常に多くなる。

 田中の場合は、サポート役の佐藤氏が帯同するため、2人きりの時間は少ないかもしれないが、3人で過ごすことは多くなるだろう。そこでストレスを感じるようならば、精神的な疲労が蓄積し、マウンドでのパフォーマンスに影響が出ることも十分に考えられる。だからこそ、通訳の選定には万全を期さなければいけない。

 成功例として挙げられるのは、松井氏の例だ。ヤンキースの公募によって選ばれたのは、ロヘリオ・カーロン氏。松井氏と専属広報の広岡勲氏が直接面談を行い、選出したのは有名な話だ。温厚な人柄で、本人だけでなく日本の報道陣とも良好な関係を築いていた。

 松井氏は著書「不動心」の中で、自分と同じように時間にルーズであることも、関係がうまくいっている1つの要因だと記している。面談の際に、自分と同じ匂いを感じ取ったのかもしれない。

 カーロン氏はヤンキースを2009年いっぱいで退団してからも松井氏に帯同。エンゼルス、アスレチックス、レイズでも通訳を務めた。つまり、メジャー生活の全10年間に渡って名コンビを組んだことになる。各チームのスタッフ、選手、関係者からも愛され、米国での活躍にはなくてはならない存在だった。

■黒田、ダルビッシュを支えている二村氏

 現在はダルビッシュ有の通訳を務める二村健次氏も貴重な役割を果たしてきた。2008年に黒田博樹がドジャースに入団してから、ヤンキース1年目の2012年まで通訳を担当。メジャー屈指の投手としての地位を確立するまで、公私両面でサポートを続けていた。カーロン氏と同様に温厚な人柄で、人望は厚い。

 昨年からはダルビッシュの通訳に転向。スペイン語も堪能なことから、中南米系の選手が多いレンジャーズで存在感を発揮している。右腕もすぐに心を奪われたようで、絶大な信頼を寄せている。

 昨年6月25日には、ダルビッシュと黒田との投げ合いが実現。黒田は6回2/3、ダルビッシュは5回1/3を3失点と、ともにまずまずの内容で勝敗はつかなかった。すると、ダルビッシュは試合後の会見の最後に「あと1つだけあるんですけど」と自ら切り出し、「試合中に僕と黒田さん、多分6対4くらいで二村さんは黒田さんを応援していたので、それが悲しかったです」と冗談交じりに話している。

 信頼関係が出来上がっているからこそ言えたジョークで、ダルビッシュは半年ほどでその誠実な人柄に惚れ込んだようだ。奪三振王やサイ・ヤング賞投票2位など、飛躍の1年になった陰には、圧倒的な実力に加えて、二村氏のサポートも大きかった。

 田中が公募で通訳を選ぶなら、全くの白紙からスタートすることになる。これまでにメジャーで通訳を務めた経験がない人物になる可能性が高いからだ。もちろん、野球の知識やハイレベルな英語力は必要だが、私生活でも時間を共にすることを考えれば、それよりも重要な要素は「人柄」となるだろう。田中の真っすぐな性格を考えれば、誠実であるかどうかはキーポイントになりそうだ。

 松井氏にとってのカーロン氏と同じように、誰からも好かれるような通訳を公募で選出することが出来るのか。14日のキャンプインまでにはパートナーを決める必要があるだけに、残された時間は少ない。重要な決断を下すときが迫っている。

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