米国と出口戦略を交渉せよ・・・普天間飛行場の辺野古移設

沖縄県の仲井真知事は昨年末(12/27)、普天間飛行場の辺野古への移設に向け、政府が提出した沿岸の埋め立て申請を承認した。国は今後、着工に向けた調査、設計に入る。1996年の日米合意から17年間を経て、普天間問題は大きな節目を迎えた。
|

 沖縄県の仲井真知事は昨年末(12/27)、普天間飛行場の辺野古への移設に向け、政府が提出した沿岸の埋め立て申請を承認した。国は今後、着工に向けた調査、設計に入る。1996年の日米合意から17年間を経て、普天間問題は大きな節目を迎えた。

 普天間飛行場の返還。それは、当時の橋本総理がまさに心血を注いで成し遂げたものだ。普天間飛行場のような戦略的要衝の地を米国が返すはずがないという外務省の反対を押し切って、橋本首相がクリントン大統領との直談判で確約を取りつけたのだ。

 沖縄の基地負担軽減という観点からは県外移設が望ましいに決まっている。しかし、国際約束である日米合意の存在や移設の現実的な可能性、これまでの経緯などを踏まえると、普天間飛行場の危険性を一刻も早く除去するために、辺野古移設はやむを得ない措置だと考える。鳩山由紀夫元首相のように、耳触りの良い「県外移設」を口先だけで唱えていても、その返還がいたずらに延びるだけだろう。ただし、辺野古にするにしても、同時に、その出口戦略を並行して検討しておく必要があると私は思っている。

 普天間飛行場の返還が決まったものの、その移設先が難航していた時、私が橋本首相に提案したのが、「杭打ち桟橋方式」(QIP)による海上施設だった。生態系や騒音をはじめとした環境への負荷も比較的少なくてすみ、沖縄県民の負担もなるべく軽減、かつ日米安保からの要請も満たすという点をギリギリまで追求したのが、この「海上施設案」だった。

 「杭打ち」なら、いつでも撤去可能で基地の固定化の懸念も払拭できる。恒久施設というイメージがない。沖縄の県民感情が少しでも和らげばと考えた。また、杭の間を海流が通り抜けるので、海洋の生態系にも大きな影響が及ばない。土砂による埋立てやメガフロートのようにコンクリート製の防波堤を打ちこむような工法では、その生態系に多大な影響を与えるからだ。さらに、騒音や安全という観点からも、海上施設なら沖合なので、その悪影響や危険性が軽減される。

 決してベストではないが、そういうメリットがあると判断して提案した。この案は、当時の橋本首相、梶山官房長官の採用するところになり、米国とのSACO(沖縄における施設および区域に関する特別行動委員会)の場でも検討され、採用されたのだ。

 しかし、いま政府が進めている構想は、住宅地の上空を軍用機が通過しないようにV字型の滑走路を整備するという工夫はあるが、基本的には沿岸部の埋立てだ。これなら、この飛行場は恒久的になるおそれがある。したがって、出口をしっかり決めないと沖縄の人は納得できないだろう。

 「出口」とは、辺野古の新飛行場からの将来的な海兵隊の撤退、あるいは県外、海外移設等について、将来展望を明らかにすることだ。それを米国との交渉でしっかりとやっていく。東アジアの安全保障環境もこれから変化していく。それに応じて米軍再編も進んでいく。そうした中での、沖縄からの海兵隊の撤退ということも、なまじ絵空事ではない。現に、この普天間飛行場の返還を決めた時、同時に海兵隊の削減も沖縄は求めたが、当時の状況からとてもそこまでは踏み込めなかった。しかし、それから10年以上が経ち、むしろ、米国側から海兵隊のグアムへの移転(8000人)が決定されたではないか。こういう10年スパンでみれば、何も実現不可能なことではないはずだ。

 これから環境アセスも始まる。ここは珊瑚礁がきれいでジュゴンも生息する美しい海岸地帯だ。こうしたプロセスは出来得る限り公開して、住民にとって透明性ある手法でやっていくべきだろう。安倍政権が約束した、地元自治体が米軍基地で環境汚染を調査できるようにする地位協定の見直しも精力的に進めていくべきだろう。環境を守る、住民の安全を守る、そのためには、政府はあらゆる方策を駆使していくべきだ。

(この記事は、1月14日の「今週の直言」から転載しました)