食品偽装、問われるのは法律や行政も

今回偽装が発覚したホテルやレストラン、また百貨店は、そもそもブランドとしての資質や価値そのものが根底から揺らぎはじめたわけですが、法律の不備、また行政の指導にも盲点があったことも発覚したことになります。
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赤信号みんなで渡れば怖くないとばかりに、次々にブランドのホテル、レストラン、さらに百貨店まで食材の「誤表示」があったことの発表がなされてきています。先陣を切った阪急阪神ホテルズの出崎社長は、辞任にまで追いやられ、割を食ったことになります。業界の意識の低さや、消費者を欺く体質には呆れ果てるばかりです。

しかし、法に問われず、捜査も行われず、当事者が頭を下げればいいというのも不思議な光景です。これがもし食材の卸業者が行ったことであれば、確実に違法行為で、いっせいに家宅捜査が行われます。

たとえば、最近、三重県四日市市の三瀧商事によるコメの産地偽装がありました。中国産や米国産を混ぜたものを「国産米」と表示したり、酒や菓子の原料となる加工用米を「主食用米」と用途を偽って売っていたことはご記憶に新しいと思います。こちらは、「日本農林規格(JAS)法」違反と「米のトレーサビリティー法」違反の疑いで三重県警が家宅捜索を行っています。おそらく信用が失墜し、経営もそうとう厳しいところに追いやられたと思います。

つい最近、中国産を静岡産のうなぎと偽って販売した静岡県のウナギ加工品販売会社「大井川うなぎ販売」などの5社には「不正競争防止法」で静岡県警が捜査に乗り出しています。

それらと比べても、今回の一連の「誤表示」は、いかに釈明しようと産地どころか、異なる食材を使った悪質な「偽装」そのものでしょうが、不正競争防止法違反なり、景品法違反に問われず、頭を下げて済むというのでは、逆に法律そのものが問われてきます。

今回偽装が発覚したホテルやレストラン、また百貨店は、そもそもブランドとしての資質や価値そのものが根底から揺らぎはじめたわけですが、法律の不備、また行政の指導にも盲点があったことも発覚したことになります。

食材の「中間流通」、「加工」、「小売」には、DNA鑑定まで駆使して、そうとう厳しく管理され、また法による規制、行政指導も行き届いているわけで、不正があった場合は大事件に発展します。しかし「調理」がすっかり抜け落ちていたわけです。それでは法のもとの平等ではありません。

しかも、気がついたのですが、いずれも産地保護、産地のブランド化を目指したものです。それはそれで結構なことですが、最終の消費者を保護するという視点がなかったのではないかと疑われます。

消費を起点に見れば、スーパーなどで食材を購入するだけでなく、今回偽装のあったおせちを含めた惣菜などの調理済み食品の購入、また外食の比率は高く、中食あるいは外食の「調理」にも目配りするのが自然です。

この数年は、節約志向による外食離れ傾向が見られるものの、平成23年の家計支出に占める「外食比率」は35.2%、それにさらに加工したものを加えた「食の外部化率」は44.1%と高い比率を占めています。そういった現実を考えれば、レストランや小売業でなされる「調理」についても行政が指導するなり、悪質なものは法で取り締まるという発想になるはずです。

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まだ生産者志向から抜け出していないということでしょうか。食品の「入口から出口」までが、カバーされていなければ、行政も法律も抜け穴があったことになります。目が節穴だと言われてもしかたありません。

それにしても、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」とばかりに追随して食材表示の誤りを発表し、謝罪会見を行っているわけですが、赤信号を渡ってその先に待ち構えているのは蟻地獄です。ブランド崩壊で、客数減、客単価減の悪循環が始まります。ブライダルやパーティなどの市場でも変化が起こってきそうです。

(※この記事は11月6日の「大西宏のマーケティング・エッセンス」より転載しました)