スーパーマーケットの富士屋

東京都千代田区の神保町駅前で営業を続けていた、スーパーマーケットの富士屋が2013年7月30日をもって閉店した。2013年7月16日から「改装前の売りつくしセール」と称し、7月31日まで行なう予定だった。ところが7月30日をもって突如閉店した。従業員、常連客、仕入れ業者にとっては、寝耳に水だった。
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東京都千代田区の神保町駅前で営業を続けていた、スーパーマーケットの富士屋が2013年7月30日をもって閉店した。

昭和の雰囲気が残り、居心地のいい店だったが

私が富士屋というスーパーマーケットと出会ったのは、1999年秋だった。昼食を購入しに、何気なく入ると、カツ丼、中華丼と言った丼物に目がいく。1階食品売り場のレジが混み合っているときは、「2階のレジで精算してください」という案内放送が響いていた。

店員も心に残る人がいた。ある熟年女性は、レジでいつも「いらっしゃいませ」と独特の甲高い声でお客を迎え、おつりについては完璧な暗算で渡す。世話好きな印象を受けた。今もあの熟年女性が忘れられない。

その後、本格的な弁当販売に乗り出し、売れ行きも順調に見えた。

ウソつき閉店に街は騒然

富士屋は、2013年7月16日から「改装前の売りつくしセール」と称し、7月31日まで行なう予定だった。ところが7月30日をもって突如閉店した。従業員、常連客、仕入れ業者にとっては、寝耳に水だった。

翌7月31日、富士屋社長の前川明彦氏は、破産を告白するビラを店頭に貼り、今後は弁護士が代理人となって破産宣告の申立を行なうという(8月16日付で自己破産した)。この案内に街は騒然とした。

おそらく多くの人々は、"ウソ閉店"に裏切られた思いがあるはずだ。最初から「閉店前の売りつくしセール」にすれば、常連客は納得したと思う。

中部地区労働者交流会などが発行したビラによると、店休日は正月3が日のみ、休日出勤手当、残業代などを払わない。その上、会社の恣意(しい)的による賃金の大幅削減、健康診断なしなど、職場の環境が悪かったという。

後継店に入ってみた

富士屋の後継店として、富士屋の後継となるドラッグストア兼コンビニエンスストアが同年10月14日にオープンした。店内は改装されており、明るく清潔で、売り場面積は広く見える。弁当のメニューは富士屋を継承した部分があるので、懐かしい。コンビニ用の銀行ATMもあるので、営業時間内はお金の出し入れができる。

後日、平日の正午過ぎに来店した。品数は富士屋に比べると豊富だが、お昼時だというのに、利用客はコンビニや飲食店に比べ、少ない印象を受ける。苦戦している理由としてあげておきたいのは、交差点を渡ったところに薬屋があること、神保町交差点周辺に三菱東京UFJ銀行の支店、みずほ銀行やコンビニ他店のATMもある。

同会などが発行したビラを見ると、現在でも地域から富士屋の継続、従業員の雇用を守るための賛同署名が集まっているというが、すでに店舗は他業者の所有になった以上、神保町で再建できるのは容易ではない。