神戸の老舗、海文堂書店が2013年9月末に閉店することが決まったそうですが、これを受けてふと思うところがあったので、今日は本屋に関することなどについて少し。
1 減少する本屋
日本著者販促センター によると、1996年には、22,296店舗あったのが、2012年には14,696店舗にまで減少してしまっております。
2002年には19,946店舗あったので、ここで10年で5000店舗が閉店した計算で、このまま単純計算していくと、本当に最後には何店舗生き残るのかという話です。
実際問題、数の上で閉店するのが最も多いのは、坪数の少ない昔ながらの書店なのでしょうが、今回の海文堂書店のようにいわゆる老舗(大型店舗)も閉店せざるを得ない状況になってきています。
2 減少する原因
こうした原因として真っ先に思いつくのが、2つで、1つめがアマゾンに代表されるインターネット販売の拡充で、2つめがBOOKOFFに代表される中古書店の台頭ではないでしょうか。
特にインターネットでは、海賊版の問題などがありますが(中国で、ニセモノが蔓延る理由)、今回の趣旨からはずれるのでそれは無視しても、本の中身を読むだけなら、電子書籍という形で購入すれば、現物の本を買うより安く、早く読めるという利点があります。
中古書店も確かに以前からありましたが、以前は中古書店には専門分野があり、自分の専門分野の本をどの位の値段で売れるかを見極めながら買い取るという知識が要求されたわけで、誰もができるものではありませんでした。
そのため、数も限られており、影響も限定的だったわけですが、そうした買い取りを極めて単純化し、誰でもできる形で全国展開を始めたBOOKOFFのような新しい中古書店の影響はこれまでの比ではなかったと考えます。
3 時代
こう書くと、私が中古書店やインターネット販売に対し批判的な立場ではないかと思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
新しい商法、新しい技術が生み出されたことによって、これまであった商法が衰退し、商売替えを余儀なくされるというのはこれまで何度もあった話で、こうした時代の変化というのは仕方がないことと思っております。
例えばマスコミはこれまで記者クラブなどの形で情報源を独占し(日本の報道の自由度は低いのか?)、さらに自分たちだけが情報を発信する手段を有していたわけですが、インターネットの発達により、こうした独占に陰りが見えるようになってきました(ネットの影響力とマスコミの責任逃れ)。
4 負の影響
ただ、問題は私自身のブログなどが典型ですが、ネットに公開された新聞記事などを元記事として情報を仕入れているので、これまでも散々マスコミ批判をしてきておりますが(慰安婦問題で橋下市長に喧嘩を売った記者と新興宗教)、マスコミがなくなると情報源がなくなってしまうということを意味します。
中古書店も同じで、書店で新刊を買って、それを中古書店に売ってくれる人がいるから成り立っている商売であり、書店がなくなってしまっては自分たちの依って立つ基盤がなくなるということを意味することとなります。
5 本屋という形態
また、書店がなくなるとどんな影響があるかという問題があります。書店は「文化情報の発信基地」という方もおられますが、実際問題として、書店が売れ筋を追求していくと、雑誌と漫画を中心に置かざるを得なくなります。
だったら品揃えの豊富なインターネットで買った方が便利だし、コンビニでも用は足りるのではないかという話にもなりかねません。
それに「本」という形態をどこまで重視するかという話もあります。正直私自身がそうですが、本好きは、「本」という形態で所持していたいが故に、今一電子書籍に否定的な方もいますが、本好きであればあるほど、本の置き場に困り、結局最後は電子書籍という話も良く聞きます。
6 最後に
そうなるとますます街の本屋は存在意義を無くしかねないわけですが、どうしてもインターネットだと今まで読んでことのある作者の本しか買わないという話になりかねません。
ただ、結構本屋に行っても、知っている作者の本しか手にとらなかったり、売れ筋ランキングの本を手にとっていることが多いため、あまり偉そうなことを言うつもりはありませんが、何事でも選択肢は多い方が良いと考えます(うつになる可能性と「逃げる」こと)。
そのため、本に触れる選択肢も多い方が良いという発想で、そういう意味で書店も多くあってもらいたいと思っているわけですが、実際に経営をされている方の苦労を考えると何も言えなくなってしまいます。
(※2013年8月8日の「政治学に関係するものらしきもの」より転載しました)