「福島原発汚染水対策」は最悪のシナリオに耐えうる計画を~マンモスタンカーによる浮体式汚染水貯蔵設備を提案

いま福島第一で起きていることをすべて正しく理解している専門家は一人もおりません。必要な知識は原子力工学から土木工学、流体力学、危機管理手法、多くの英知が結集されなければなりません。当ブログはマンモスタンカーによる浮体式汚染水貯蔵設備を提案します。
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あまりにも遅すぎではありますが、ようやく政府の基本方針が示されました。

福島原発、汚染水対策に470億円 政府が基本方針

遮水壁、建設前倒し

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDF03004_T00C13A9MM0000/

470億円の内訳ですが、柱は2つです、凍土壁の建設費で320億円、浄化装置の開発費で150億円とあります。

この基本方針、無いよりはまだマシかもしれませんが、非常に不満足です。

3点に絞り問題点を挙げさせていただきます。

まず技術的な課題と限界をはっきりと示すべきです。

「凍土壁」ですが、これだけの大規模の、すなわち建屋を囲むように地中を凍らせる「凍土遮水壁」の設置は前例がなく、技術的に運用可能か、大きな疑問符がついていることを国民に明示しておかなければなりません。

さらに仮に運用開始が可能であっても、そのシステムを長い年月稼働し続けることができるのか、実は完成しても耐用年数は不明でありへたすると2年も持たない代物かもしれないわけです。

そもそもシステムが問題なく稼働したとしても、汚染水の発生を何%食い止めることができるのか、稼働してみなければわからない点も国民に正しく知らせるべきでしょう。

また「浄化装置」のほうも、現状の約60種類の放射性物質を除去できる多核種除去装置(ALPS)が不具合続きでまともに稼働できていない現状から、浄化装置を増やすとしても技術的課題がまったく克服できていないことをこれも国民に明示しておかなければなりません。

そしてこちらもそもそもいかに「浄化装置」を増やしても完全なる除染は不可能なこと、除染できずトリチウムは残ってしまうことは明示すべきです。

つまり一点目の問題点は本基本政策の限界性を明示してないことです。

470億円の巨費を投じても費用対効果はやってみなければわからないことを国民に示しておくべきです、そしてたとえすべてが政府の計画どおりうまくいったとしても汚染水を100%なくせるわけではないことをはっきりさせておくべきです。

二点目の問題点はたいへん基本的なしかし重大な点ですが、政府が示した470億円、凍土壁の建設費320億円、浄化装置の開発費150億円ですが、これはイニシャルコスト(初期投資)だけで、肝心のランニングコスト(運転費用)が明示化されていません

巨大な「凍土遮水壁」の稼働には莫大な運転費用が掛かるはずですし、「浄化装置」だってラインを増やすほどメンテナンス費用も含めてランニングコストは増加するはずですが、肝心のその費用の試算が示されていません。

三点目の問題点ですが、すでに発生してしまってタンクに貯めている汚染水と、「凍土遮水壁」や新たな「浄化装置」が予定通り完成するまで、たとえば1年だとして、その間も毎日400トンの汚染水は発生続けるわけで、1000トンタンクで百数十基増えるはずですが、総量30万トンに及ぶ汚染水の存在がこの基本計画から完全に無視されていることです。

現状発覚してきた汚染漏れの状況から今後、事態がさらに悪化することは必至と思われます。

25日付け毎日新聞記事によれば、「今回水漏れを起こしたタンクは、設置工事の期間が短かった上、東電の財務事情から安上がりにすることが求められていた」事実が判明しています。

汚染水漏れ:「タンク、金かけず作った」協力会社会長証言

毎日新聞 2013年08月25日 07時40分(最終更新 08月25日 09時24分)

http://mainichi.jp/select/news/20130825k0000m040091000c.html

記事より東電協力会社役員の生々しい告発発言を抜粋します。

「タンクは工期が短く、金もなるべくかけずに作った。長期間耐えられる構造ではない」

「野ざらしで太陽光線が当たり、中の汚染水の温度は気温より高いはず。構造を考えれば水漏れは驚くことではなく、現場の感覚では織り込み済みの事態だ。現場の東電の技術スタッフも心配はしていた」

もともと耐用年数は数年と短いのですがすでに複数のタンクがこの酷暑により漏れ出しています、これから数年のうちに多くのタンクが経年劣化し漏れ出し始め、その増加率は時間とともに増すことになるでしょう、最悪の場合と東電の対応能力を超えるカタストロフ的漏えいが生じるかもしれません。

これは脅しでもなんでもなく、極めて科学的な推測であります。

 ・・・

このような基本計画は本来は最悪のシナリオを想定をしてそれに備えるべきなのに、残念ながらそのような想定はまったくされていません。

私が個人の責任で最悪の想定シナリオを申しましょう。

1年かけて建設した「凍土遮水壁」は思うように稼働せず、動いたり止まったり、結果、汚染水の発生量抑制は期待されたほどは減少せず、そうこうしているうちにあちこちのタンクから汚染水の漏れが多発し始め、それがどんどん海洋に流出していく・・・

そのような手に負えない悲惨な事態を避けるためには、工業立国である日本の技術と知恵を総結集すべきです。

抜本的な汚染水を減じる基本計画に加えて、最悪のシナリオに備えるべきです。

例えば、200億円も掛ければ、20万~40万トンクラスの中古のスーパータンカーを購入できます。

これを福島第一港湾近傍に、浮体式汚染水貯蔵設備として半永久的に係留するのです。

地震・津波にも強いです。

そこで汚染水を集中管理させます。

これにより汚染水タンク漏えい問題を解決でき、人的資源、経費を、ほかの建設的な作業に回すことが可能となります。

これとて長い目では時間稼ぎにすぎませんが、ランニングコストは軽微ですし、何よりも最悪のシナリオに耐えることができます。

何よりもすべて既存の技術で100%実現可能であることが重要です、技術的なリスクはないのです。

素人の発想と批判されてもかまいません。

いま福島第一で起きていることをすべて正しく理解している専門家は一人もおりません。

必要な知識は原子力工学から土木工学、流体力学、危機管理手法、多くの英知が結集されなければなりません。

当ブログはマンモスタンカーによる浮体式汚染水貯蔵設備を提案します。

(※2013年9月4日の「木走日記」より転載しました)